「この子、王子に似てる」
たまたま外に出て、適当に入った雑貨屋で凛子の買い物に付き合ってやってる時に、アイツがそう言って持ってきた皿とコップにソイツは書かれていた。
KIRE NECOとかいう、そのまんまのネーミングのセンスのカケラもねえ、ブッサイクな猫のキャラクターだ。
そういや、前に気まぐれで遊んでやった女共の中にもこのキャラの小物持ってやがる奴がいたな。
流行っているらしく、どこに行ってもこのブス猫を最近よく見かける。
とにかく不愉快この上ない。
イライラしすぎて気分が悪くなって、このままじゃ被った仮面が外れそうで、俺は目に入ったゲーセンに入った。
格ゲーでもして少しでも気を紛らわそうと、対戦用のゲームコーナーに向かおうとした時に……ソイツと目が合った。
「ちッ……ウゼェ……。何見てんだコラ……」
クレーンゲームの筐体の中、まるでコチラにガンを飛ばしてくるかのように、コチラを見ているブサイク猫。
「なんか文句あのか……。あぁっ?!」
馬鹿か、俺は。
たかが人形にイラ付いて、話しかけて。
それもこれも、あの馬鹿女が「俺に似てる」とか言ってきやがったせいだ。
腹立たしい事に、あの女はこのキャラが気に入ったらしく、仕方なく買ってやった皿とコップを毎日使ってやがるのだ。
俺以外に向けられるアイツの嬉しそうな顔が頭によぎる。
「ざっけんなよ……。テメェをそこから出す義理なんざ俺にはねぇんだよ……」
無視して、目的の場所に行こうとして……
「KIRE NECOだー! 可愛いー! ねぇねぇ、取ってー!」
「えー? 仕方ないなぁ」
見るからに頭悪そうなカップルが、これまた頭悪そうな会話で俺の後ろから、ブサイク猫を取ろうかという話をしながら立っていた。
俺は何故か、コイツらにくれてやる事が惜しくなって……。
『チャリンッ』
小銭を気が付けば投入していた。
はっ、勘違いすんじゃねー。
テメェを助けるわけじゃねぇ。
あの馬鹿女にテメェをやるわけじゃねぇ。
そうだ、俺に似てるなんて、嬉しそうにニコニコしながら侮辱しやがったアイツに、なんで俺が好き好んで大嫌いなテメェを与えてやんなきゃならねぇんだ。
これは単なるストレス発散だ。
俺は他人に嫌がらせするのが好きなだけだ。
カップルが『あの人終わったら取ってやるからな』なんて言う声と共に、離れて行く声が聞こえた。
はっ、ざまぁみやがれ。
液晶画面に5回と回数が表示されている。
……まぁ、金入れたからにはやってやるさ。
どうせ、暇つぶしだ。
別にテメェなんていらねーが、まぁ、取れちまったら仕方がねぇ。
俺が持っていても仕方がねぇから、あの馬鹿女にくれてやるさ。
腹が立つ事に、ブサイク猫はたったの一回で取れてしまい、俺のイライラは更に募り、その怒りをぶつけるように猫の首を脇で絞めた。
終わり
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王子はどこまでいっても、素直にはなれない。
猫かぶりサイコヤンデレ 本編1話→
[R-18] 第一話:猫被りサイコパスの誘いを断ったら、拉致され歪んだ感情をぶつけられた話 | novel/20053427
2024-01-08 12:21:50 +0000