この年、この巻において、ついに「魔術師不還」が描かれました。主人公ラインハルトは、半身と宿敵と、欠くべからざる存在を二つながら喪ってしまいました。
いつも自分の心を判ってくれて、夢も苦難も分かち合う半身キルヒアイス。自身の全知全能を傾けるに足る、自分を研磨し輝かせてくれる宿敵ヤン・ウェンリー。思えば、キルヒアイスを伴って、ヤンに対峙していた頃が、変な話、ラインハルトさまは一番生き生きとキラキラしていた気がします。前者を喪って、一時は死んだようになってしまったのを、後者への闘志によって、身命をも燃やしながら突き進み続けて、結局勝てないまま、自分のあずかり知らぬところでこれも喪われてしまった。
キラキラしてた頃のラインハルトさまを見たいな、と思って原作外伝を読み返して、これを原作で読めるってのも赤金まじパねぇな……ってなったんですが(笑)、そういえばフジリュー版は1巻から読めるんだった! と、時系列描写の強みを改めて感じました。主人公と半身と宿敵と、この作品の根幹たる重要な関係が4巻#028、なんなら1巻#004までに明確に描かれていて、しかもそれが28巻に至るまで揺らいでないの、本当にすごい。もちろん完結作品を扱う有利はあるけど、構成の妙というか、他媒体にはない時系列描写ですし、原作と併せて何周でも読みたくなります。外伝で、アンネローゼさまにふさわしいのはミューゼル家がキルヒアイス家の隣に引っ越してきたあの時へ、空間ではなく時間的にラインハルトさまは規定してしまう、という原作外伝の一節に、ああ、フジリュー版で諫めに来たキルヒアイスがお連れしたあのお姿か……! となったりとか、改めて気づくこともたくさんあります。
2024年はいよいよロイエンタールと、後継者ユリアンにスポットが当たってくるはずで、まだまだ楽しみです。フジリュー先生がご壮健で、思うままに作品を完結できますようお祈りし、それを最終話まで購読しようと思います。
2023-12-31 14:24:04 +0000