テツは店で始まったイベントの為、綺麗にラッピングされたジンジャークッキーたちを鞄に詰め込んで街をゆっくりと巡っていた。イルミネーションに飾られた並木道、クリスマスどころかその少し先の年越しに向けた装いをしつつある街並みを改めてじっくりと見て回りながら、知り合いや声をかけてくれた方々へ少しずつクッキーを配り歩いていた。
ふと、いつもはあまり来ないリソ神社の方へと辿り着いた時。何やら香ばしい香りに誘われた。
つられるようにそのまま進んでいくと、そこにはそこそこの大きさがある出店と、店番らしいキョジオーン。その手元は大きな寸胴に向いており、ああ匂いの元はここか、と納得した。
「こんにちは」
「いらっしゃい!カフェきららの出張店へようこそ」
「カフェきらら……ああ、西リデアの、ぬいぐるみとかの」
「ええ!ご存知だったの?」
くるり、と大きな瞳を輝かせたキョジオーンさんが嬉しそうに声を上げる。テツはちょっと気まずそうに「お名前だけ、店主から聞いたもので」と正直に告げれば、それでもにっこりと笑って見せた。
「知ってくれてるだけでも嬉しいものよ。えっと……」
「テツです。ビル街の、喫茶Shakeで働いてます」
「ナディよ。よろしくね」
「わたしはキキだよ!よろしくね!」
……はて?
暫し呆けて、ようやくカウンター上にいるもう一人の存在に気がついた。ふんす、と自慢げにしているその様子からどうやらかくれんぼのようなことをしていたらしい、コジオの少女がぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「あらキキちゃん、お花はもういいの?」
「おきゃくさまきたからいい!テツおにいちゃんなにたべる?」
にっこり笑顔の少女の言葉にようやくハッとする。そういえばここはカフェと言っていた。何も買わずにここを立ち去るのも失礼だろう。何よりちょっと小腹も空いてきていたことだし。
「……じゃあ、このちゅららてひとつ」
「はーい!」
喜ぶキキの横でにっこり頷いたナディがラテを用意し始める。どうやらこれがこのお店の常らしい。店によって特色が変わるのは当たり前だが、こういうのもあるのだな、とひとり納得する。
ふと、その目端に色鮮やかなものが映った。赤と青紫の燃ゆる意匠が施されたマフラー。メニュー表にも書かれているようでれっきとした商品らしい。そのモチーフになっているポケモンの種族名を見て、目が離せなくなった。
つくづく、自分はこの種族に関わりがあるのだろうか。なんて。
「はいお待たせしました。どうぞ」
「ありがとうございます。……あの」
「テツおにいちゃん、ずっとマフラー見てたよね!」
「あら」
テツが言う前に答えを当ててみせたキキはまたもドヤ顔を披露した。正直テツもすごいと思った。この子は相手をよく見ているんだなぁ、と少し嬉しくなった。
「ええ、グレンアルマのは今付けたいのですが、ソウブレイズの方も包んでいただけますか?」
「勿論!プレゼントかしら?」
「ええ、お世話になっている方に。きっと喜ぶと思うので」
そう言いながら、テツは鞄へと手を入れる。ガサガサと中身を漁る様子に二人が首を傾げる中、目当てのものを先ほど見事に言い当てた少女へと差し出した。
「ボクのお店、今プレゼントを配ってるんだ。素敵なプレゼントを見つけてくれたサンタさんに、ボクからお礼。貰ってくれるかな」
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年明け前に滑り込み!素敵なこちらのお店【illust/114665540】にお邪魔させていただきました!
限定ラテは飲まなきゃ……と使命に駆られた結果。そしてお二人には当イベント【illust/114306800】のジンジャークッキーをプレゼントさせていただきました。
何かありましたらお気軽にDMまで。
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お借りしました!
ナディさん【illust/107321299】/冬の姿【illust/114635714】
キキちゃん【illust/106742125】/冬の姿【illust/114635714】
テツ【illust/106746904】/冬の姿【illust/114428603】
2023-12-31 12:07:12 +0000