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聖剣の目隠し乙女ええと…ここが窓ね…。
ある日突然魔眼が発現した私は、住み慣れた城から人気が少ない離宮へと移された。
ずっと目隠ししたままの手探り生活にはまだまだ慣れない。
それでも我儘なんて言えない。
魔眼が発動した時、周囲の人々がバタバタと倒れていった。
幸い覚醒初期の魔眼は力が弱い為、死者が出る様な大事には至らなかったものの、意識が戻った人の中には数日間の記憶が無くなってしまった人が何人もいたという。
こんな恐ろしい力がこれから強くなっていって、自分で制御する事ができないなんて。
重くなる気持ちを何とか新しい生活へと前向きに切り替える。
魔眼が発現して悪い事ばかりじゃない。
政略結婚相手の悪名高い嫌味で下品な伯爵は、私に魔眼が発現したと知った途端に婚約破棄を一方的に告げて来た。
これには思わず飛び上がって踊りだしてしまう程、嬉しかった。
そして離宮に隔離された私を労わって、幼い頃から仲が良い侯爵様が度々尋ねて下さるようになった。
お付きのメイドも皆良くしてくれて、優しく思い遣りのある人ばかりで心強い。
先ずは、指先の感覚で読書出来る様にならないと。
その前に、離宮の間取りを頭の中に叩き込んでおかないとね。
以前、書庫で見つけた【ドⅯ令嬢の目隠し散歩】を思い出して、思わず身体が熱くなってしまうのでした。
魔眼、それは人を傷つけ死に至らしめる忌むべき力。
極稀に生まれ付き魔眼を宿す例もあるものの、多くは成長の過程で発現する。
古くは狩猟時代、狩りに出立する男性は自身の気配を殺すと共に、戦においては躊躇わず外敵を殺す攻撃性を発揮。
社会を形成してからは、家長としての重責に縛られ自由を持たず、古来より常に己を殺し敵を殺し続けて来た事が、男性が魔眼を得た場合の遺伝子レベルにおける本能的な制御能力に深く結びついていると言われている。
一方、女性の魔眼は自力で制御する事が決して出来る様にならない。
見た者を無差別に魔眼の発動対象にしてしまう女性は魔眼が発現すると以降は、目隠しをして生活する事になる。
2023-12-28 10:04:14 +0000