うとうとタキオン

白河フナ

学園主催のクリスマスパーティ。
ウマ娘はもちろんのこと、担当トレーナーも参加可とのこと。
タキオンが参加するといことで俺も(監視を兼ねて)参加した。
途中タキオンが料理に実験薬を盛ろうとしたり、誤ってアルコール飲料を飲んだキー君が奇声を上げながら走り回ったりして、その度に俺は事態を収めるために奔走した。
事情を知っている他のトレーナーは「またやってるよ。」と言いたげな顔で呆れていて、生徒たちも怪訝な顔をされた。
その中でもタキオンを良く知る級友の反応は様々で、ジャングルポケットとファインモーションは笑い、マンハッタンカフェとエアシャカールは気の毒そうな顔をしていたっけ。

事態がようやく落ち着いて、備え付けのソファに腰を掛けて一息つく。
ふと、辺りを見渡すとトレーナーもウマ娘も笑い合い、楽しそうにしている。
疲れた顔をしてバテているのは俺くらいだろう。
そういえば、クリスマスパーティなんて参加したことなかったな。

クリスマスが嫌いだった。
サンタはよい子にプレゼントを渡すものだと教えられ、俺はよい子じゃなかったから。
教師の間違いを指摘して生意気だと煙たがれ、愛想がないから同級生からも相手にされなかった。
そのせいか、クリスマスプレゼントはいつも微妙なモノが贈られた。手編みのセーターとか。数年前に流行ったプラモデルとか。
実際、これらは俺の両親が絶望的に子供心をわかってなかったことが原因なのだが、当時の俺はサンタが本当にいるもんだと思っていたから、周りと上手くやれない自分対するサンタからの嫌がらせだと思っていた。
そんなわけでクリスマスにはいい思い出がなく、サンタの正体に気づいてからも、ゲーセンで時間を潰したり、バイトを入れるなりして、なんとなく毎年無為に過ごした。

―まさか、大人になってから、こんなクリスマスらしいことするようになるなんてな。
 いや違うか。普通のクリスマスってやつは担当バの暴走を止めるために目を光らすなんてことはしないよな。
 
そう思い。自嘲気味に笑っていると―
ふと、肩にかすかな重みが加わる。
隣を見るとタキオンが首をもたげている。

「—眠いか?」
「…うん」

かすかだがリアクションが帰ってきた。

「帰るか?」
「……うん」

さっきよりもさらに小さな声の返事を訊き、俺は自分のコートをタキオンに羽織らせ、背中を向けてしゃがむ。

「寮まで運んでやるから、しっかりつかまれ」

寝ぼけまなこでタキオンは俺の首に腕を回し、それと同時にタキオンをおぶさる。
たづなさんに一言挨拶をして会場を後にすると、外は雪景色だった。
どうやらいつの間にか降っていたようだ。

「…寒っ」

タキオンに自分のコートを着せてしまったため、冬の寒さをモロに食らう。
学園から寮はそれほど離れていないのが幸いなことだ。

寮までの道のりをタキオンを背負い歩く中、さっきまでの出来事を反芻する。

―やっぱりクリスマスなんてロクなものじゃないな。パーティに参加しても疲れるだけだし。

それでも、今背中にある確かな重み、俺に背負われて呑気に寝息を立てているコイツといるためなら。

―来年も、どうせ俺は参加するんだろうな。

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2023-12-24 15:33:17 +0000