聖剣の目隠し乙女貞淑眼帯、それは最愛を誓う貴婦人の永遠に続く想いの証。
鍵をかけて決して外さない目隠しが漆黒の彼方の想い人への恋心を、愛情を強く硬く育て上げるのですわ。
良家の子女は幼い頃より目隠しをして生活する事に慣れる様に育てられます。
目隠しを外す事が許されるのは家長、あるいは夫の許しがあった時のみで、生涯に渡って家族以外の人物を目に映す事はありません。
その昔、性の乱れが血の乱れ、家の乱れ、世の乱れを生み出し社会は崩壊したのだとか。
男性が血に塗れて蛮族から国を守る留守の間、女性は他の男に誘惑される事が無い様に自ら目隠しを着け強く己を律する事で健全な家々の暮らしは守られ、世界は立て直されていったのだそうですわ。
貴族の娘は許婚が決まると布製の目隠しから貞淑眼帯を身に付ける生活に変わりますの。
施錠式になっている特殊なアイマスクで家長が持つ専用の鍵を使わなければ決して外れる事はありません。
魔法的な処置が施されていて、常に清浄で快適な着け心地が保たれると共に、顔の素肌や頭皮・髪も常に清潔でいる事が出来る優れものですわ💖
眼帯に視界を覆われても優雅に振舞えるように令嬢は皆、英才教育を施されます。
歩行法や、テーブルマナー、ピアノ・バイオリン等の楽器演奏、そして不自由な生活を送る女性の為に点字が開発されましたの。
識字率が著しく低い時代にありながら、点字の習得によって女性の知識は飛躍的に向上しましたわ。
女性用点字が登場する前は女に学問は不要と言われていたそうです。
文字を読めない方の事を「文盲」と呼ぶそうですけれど、貞淑眼帯によって盲目生活を送る私達女性の多くが文字を読めるようになったことは不思議な気がしますわね。
私達貴族令嬢にとって、貞淑眼帯は誇りであると共に高度な教養と道徳を積んだことを示すステータスでもあります。
私も許婚が決まり、特注の素敵な貞淑眼帯を身に着ける時は得も言われぬ高揚がありましたわ。
お母様は外した貞淑眼帯を再び旦那様に着けられる瞬間が最も素敵な心地になれると仰っていました。
愛する殿方に自分の見る自由を委ねると同時に、支配される感覚が堪らなく昂ってくるのだそうです。
私もそんな素敵な逢瀬を交わす日々が待ち遠しいですわ。
2023-11-18 09:33:20 +0000