ブジ隊員「キャップ。これを見てください。」
ムラタツキャップ「ほう。これは壮観だな。」パイプを燻らせながら隊長は言った。
ブジ隊員「笑い事じゃないです。8か月で8体。4週間に1回ペースで落と・・・にせ銀巨人が現れているんです。」
ニベ隊員「いや、抜けてるよ。その前の女性型にせ銀巨人が・・・」
ブジ隊員「まだ言ってる。”それ”、私も出動したときでしょ?私は見てないわ。銀巨人程の大きさなら私が見てないのは変じゃない?だから夢でも見たんでしょって言ってるの。わかんないかなぁ?」
ニベ隊員「そうかなぁ?キャップとドクアラシと三人で見たんだがなぁ?」
ドクアラシ隊員「ニベ、その件はもういいじゃないか。それよりネタ切れの脚本家やデザイナーじゃあるまいし、余りに粗忽者すぎ・・・いや、多すぎると思うんだが。なぁ、ハヤタ?」
タンテイガ・ハヤタ隊員は考えこんでる体で言う。「うーん。」いつものリーダーシップは影を潜め精彩を欠いている。
ブジ隊員「初期の蛙や猫はまだマシだったのよ。銀巨猫の時は大惨事になったけどネコとはそういうものだから仕方ない。それが『過速隊、西へ』事件でハヤタさんが『MAV_R.i.c』基地専用放送局『CBS(地下ブロードキャスティングシステム)』の『ザ・ぴったしベストテン』でスポットライトコーナーに出演した時落と・・・にせ銀巨人が現れてから以降頻度が上がったのよ。」
ムラタツキャップ「あれは皆でハヤタのひやかしがてら視察していた時だったな。『立鳥緑地』池下のMAV_R.i.c休憩広場中央にある地中庭園の特設セットで出演中の女性歌手が、突然巨大化し天井ガラスを突き破ってさながら『マジンダ―Z』のように地上に出現したんだ。」
ホシノ準隊員「私はその時、親友の(鬼田)優子のラボでその放送見てたんだけど。びっくりして駆けつける途中で階段に差し掛かった時、黒玉根さんと久留米アナがスタッフ連れて駆け上がってた。地上に出たら「生放送なんで」ってそのままにせ銀巨人に歌わせたてのは、ホント笑った。」
ニベ隊員「そうだった。3分で消えたから歌い終わってなくて、生放送だったのにスタジオで歌ってる元の歌手の顔に同時編集モーフィング映像としてちゃんと放映で繋がってた。凄いなCBS!」
ムラタツキャップ「君たちはただ面白がっていたがな。水浸しになった『MAV_R.i.c』基地修復やら地上の緑地封鎖やら事情聴取やらで後が大変だったんだぞ。なんでもスタンドマイクに触ったらマイクヘッドが割れて、以降の3分間は記憶が抜け落ちていたらしい。本人は庭園で歌ってたと言い張るんだ。」
ドクアラシ隊員「それはもしかして、何らかの要因でマイクが別の物とすり替わっていたんじゃないか?なぁ、ハヤタはどう思う?」
タンテイガ・ハヤタ隊員はしどろもどろに答える。「うーーーん。わからん。」
ブジ隊員「その後はもう最悪。ショッケイ怪人たちが”怪人獣”っていうか、”怪獣人”っていうか、次々にせ銀巨人化したんだから。子供たちが無責任に巨大怪人の建物破壊を期待するもんだからそいつらもその気になってあちこち破壊しまくって。こっちは合体ロボなんていないから、まさにやりたい放題っ感じでね。」
ニベ隊員「それって明らかに誰かがS市の他局へ行って何か大切な物を落としたって事だよな。確かその頃じゃなかったか?探し物があるって足しげく関西方面へ行き来してたのは?なぁ、ハヤタ?」
タンテイガ・ハヤタ隊員はもんどりうちながら返答をひねり出す。「あーーーーーっ。そうだったかなぁぁぁ?」
彼は思考速度がずば抜けて速く行動も早いので報告している間に解決している事も多い。”タンテイガ、はやすぎる”と言われる所以で、隊長もそれ故単独行動を黙認している。一方彼の辞書に立ち止まる・振り返るという言葉が無いので、あるべき所にあるべき物が無い場合こういう事が往々にして起こってしまう。
ホシノ準隊員「それにくらべ『ギルガロイド型』は可愛かったわ。ただ3分間ニコニコプカプカ浮いてるだけだったから。『MAV_R.i.c』の秘蔵っ娘だってのは優子に聞いてたけど、まさか彼女まで”ガマァドンA娘”って感じで巨大化するなんて。もう何でもアリアリだよね。」
ブジ隊員「一度『MAV_R.i.c』基地内で起きてるからジッとしとく様言われたんじゃない?ね、ハヤタさん?」
タンテイガ・ハヤタ隊員は既に皆に背を向け天井を仰ぎながら考えていた。このままではまずい。非常にまずい!登録してない正体がバレてしまう。ハヤタ、大ピンチ!
ニベ隊員「そこでですね。この僕に前から考えてた妙案がひとつあるんですが。」一呼吸勿体つけてからにんまりとして。
「制服の内ポケットをマイクぐらいの細長いものが入る様深くしてかつ折り返しも付けたら、にせ銀巨人も現れなくなるんじゃないかと思うんです。」
「それだ!」「B'sリーチ!」ホシノ準隊員は何故それで対策できるのか分からないと言いたげであったが、他の隊員は全員一斉に人差し指を出して叫んだ。
ムラタツキャップ「よし。早速その件は上司に進言してみよう。なんなら1着試着品を作るだけでもいい。そうだな、その試着は是非ハヤタにお願いするとしよう。それまでは全員でパトロールを強化して、行動中にもし見慣れない不審物が落ちていたら不用意に操作せず、さりげなく然るべき人物に渡る様そっと返しておくように。以上!」
ニベ隊員「”ヤネケェモナァ、トラゲトケ”っていう事ですよね?」
全員「?」
円の形に閉じられていく画面中央でカメラ目線のニベ隊員はウインクをしながら翻訳した。
「僕のお国言葉で”厄介な物はしまっておきなさい”っていう事ですよ。」
2023-11-11 07:43:29 +0000