ハロウィン

ヤマ子
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 魔女は去年、『クロウト向けの魔法の手引き本~初級編~(\1728)』を手に取り、人間にする魔法を使い魔の黒猫に使ってみた。
 魔女の想像としてはもう少し少年みのある人間になることを想像していたのだ。しかし現れたのは小さいおじさんで、魔女にとっては納得の行かない結果となった。

 そして来たるYY23年ハロウィン。今年も懲りずに魔女は同じような呪文が載っているという『クロウト向けの魔法の手引き本~ごきげん編~(\1760)』を購入し、使い魔にかけてみることにした。
 今度こそ、と思ったその時、軽い破裂音と煙がもうもうと上がり、煙の中の影を見て魔女は体を固くさせた。
「な…何かでっかくない…?」
 しかし煙の向こうでは「にゃおん」と聞こえる。どういう状況だ、と焦りながら黙って見届けると、そこにはおじさんではない、若い猫耳カギ尻尾の男が立っていた。
「ネコ…?」
「ウルルルル…」
 魔女は頭を抱えた。猫は一応目の下の傷がなくなり、若くなって人の姿になっている気がするものの、中身が猫のままだった。
 どうしてこうも望むものから斜め上に外れた結果となるのか。思わず帽子を投げ捨て、付箋だらけの本をぐにゃぐにゃ持って魔法で燃やそうと思った時、背後から本を奪い取られ、頭に何か乗る気配を感じた。
「!!!」
 スリスリ、と遠慮気味に頬を擦りつけてからゴロロと喉を鳴らした猫は魔女を少し慰めているようだった。魔女は顔を赤くして杖を落とし、間近で感じる匂いに翻弄され、顔を真っ赤にしてしまう。
(ど、どういう状況さこれ!ってか、このままいつもの猫の感じだったらこのまま舐められる…!身長差的におでこをベロベロに舐められるコースは勘弁…!)

 魔女は慌てて魔法の杖を拾い、元に戻る魔法を猫に向けて唱えてやると、その部屋には魔女と、魔女の頭の上に黒猫が一匹となった。
 案の定猫はおでこを舐め始めたので、魔女は「あのままだったら本当に心臓に悪い状況になるところだった…」と、顔を真っ赤にさせたまま頭から下ろしたのであった。

おしまい

#character/reader art#My Hero Academia fanfiction#original character

2023-10-29 13:41:28 +0000