昭和17年。15歳の瀬戸内絹重は、婚約者・春原辰雄の父、春原史郎と共に汽車に乗り、忙しい辰雄に変わって買い物。史郎が、16歳で嫁入りする絹重の嫁入りの準備を手伝っていた。
そんなとき、ふと見た汽車の窓から辰雄が切掛川の辺を歩いているのを見つけて嬉しくなり、汽車の窓を開けて大声をかけたとき、辰雄は気が付いたが、絹重の被っていたベレー帽が取れて飛んでしまう
それは絹重が辰雄からプレゼントされた大切なベレー帽だ。値段は決して高くないけれども、世界に一つしかないベレー帽だ。そんな大切なものが何処かに飛んでいってしまう
絹重は走っている汽車の窓から身を乗り出して、恐れも知らずに土手野原に向けて飛び降りる。誰もが悲鳴を上げる
絹重は土手をコロコロ転がる。史郎も、絹重を追って意を決して飛び降りるが、誰もが絹重はもうダメで、死んでしまったのではないかと絶望する
しかし絹重はベレー帽が間一髪、切掛川に落ちてしまう前に受け取って、自らが怪我をしながらもベレー帽を守って起き上がる。
史郎と辰雄はそんな無事な絹重を見て、二人のほうがもう死にそうに真っ青になっている。
絹重は少し怪我をしただけで済んだが、絹重を守ろうとして追って飛び降りてきた男姑の春原史郎が複雑骨折を負ってしまい、絹重は史郎の生死を心配しながらも罪悪感を感じる。
2023-10-26 13:21:55 +0000