紀元前217年6月“待ち伏せ”

Legionarius

ハンニバル「曇天に濃霧、絶好の待ち伏せ日和、素晴らしい収穫が期待できそうだな」
伝令「ガリア人とヌミディア騎兵の配置が完了致しました。復讐と戦果を求める彼らの士気は最高潮です」
ハンニバル「大変結構だが、指示した時機に至るまで決して攻撃せぬよう、もう一度念を押してくれ。袋の口を閉じる紐は君らだと……誰だって袋の中の贈り物は多い方が嬉しいだろう?」

伝令「ローマ軍の先頭が街道の東で我が軍と接触、手筈通り敵の左側面と最後尾に全軍が攻撃を開始致しました」
ハンニバル「どんな大男も袋や網の中では思うようには動けない。誰でも下顎や後頭部を殴れば、昏倒する。戦も同じ、原則は変わらないな」
伝令「左様で、ございますか……(そこまで状況を持っていける奴がどれだけいるんだよ)」
――――

紀元前217年6月、分進するフラミニウス、セルウィリウス両執政官の軍に挟撃を受ける前に各個撃破するため、濃霧に包まれたトラシメヌス湖畔の街道沿い北側丘陵に待ち伏せし、ローマ軍が完全に罠にかかるのを静かに待つハンニバルとカルタゴの戦士達という感じで。

乳液の如き霧と薄明りに包まれ、トラシメヌス湖畔の森は曖昧な影絵のように静けさを保っていた。
微かな灯火瞬く街道の東、カルタゴの野営地に向かってローマ軍は進む。
敗勢を覆す赫々たる戦果、友軍との合流……儚い希望の光が目を眩ませ、願望と現実を見誤らせる。
カルタゴ軍は丘や森の陰に息を潜め、音もなく機会を窺う。
アルプスを越え、トレビアの戦いを勝ち抜いた精兵がハンニバルの命令を今かと待っている。
甘く致命的な漁火の罠、ハンニバルの饗応。
次回、雷光のハンニバル 第16話 「血の湖、トラシメヌス」 君は生き延びることができるか……

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2023-10-19 15:27:42 +0000