〜Cafeマルメローゼハロウィンパーティに訪れた、ある少女の見た夢〜
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『ロリポップにはびっくりを
ビスケットには絶叫を
チョコには虚飾 ケーキに悲鳴
パンプキンプリンに悪戯を
ハッピーハロウィン 嘘のお祭り
死んでるふりしたおばけのお祭り
月見て吠える狼の
革を被った羊の微笑
おばけかぼちゃの目玉を抜いて
叫びに上げた口すら割いて
ガタガタの歯を引っこ抜き
おなかを開き はらわた捨てて
■■■■かき混ぜこさえたプディング
オーブン入れて待つ間
死人のふりしてふらふらの
酔いどれ魔女が杖一振り
あっという間に昼間は夜更け
太陽にいたずら 目隠ししてね
さあさあねんねと囁くの
ハッピーハロウィン 嘘のお祭り
生きてるふりしたおばけのお祭り
あなたの隣にいるのはだあれ?
乾杯交わしたソレは何?
今宵は祝祭 ケタケタ笑え
悲しい人こそゲラゲラ笑え
墓を暴いた罪だって
今宵限りは逢瀬とみなし
誰も罪には問いやしない
ハッピーハロウィン 嘘のお祭り
生きてるふりしたおばけのお祭り』
赤金の髪に狼の耳を生やした詩人は、語り終えて一礼すると、長く鋭い爪を生やした人差し指を私に向けて伸ばそうとしますが。
「――おや、失礼しました」
手を引っ込め、衿に薔薇をいくつもあしらったジャケットのポケットからハーフグローブを取り出し、くるりと私に背を向けました。
再び向き直った詩人の手。長かった爪は何故かグローブの形ぴったりに収まっていて、首を傾げる私の唇に詩人はそっと指を当て、密やかな声で言います。
「どうかお気をつけて。此処から先は、何が真実で何が嘘か、こノ私ですら曖昧。存分に祝祭をお楽しみ下さいませ」
黒いドレスブラウスの首元を飾る鮮やかな青薔薇から、りん、と鈴の音。
立ち上がった時にふわりと立ち上った、咲き始めの花に似た瑞々しい香りが鼻をかすめます。
「詩人さんの仮装、とってもお似合いですね」
思わず飛び出た私の賛辞に、飾り物のはずの耳がぴるぴると動いたような気がしました。
「ふふ、ありがとうございます。さあ、お手を」
わくわくそわそわする私の手を取り、人狼姿の詩人は会場へと続く門を一緒にくぐってくれました。
開いた扉、ドアベルの鳴った先導かれたそこは既に賑やかで、あらゆるお化けや怪物に仮装したお客が、色とりどりのお菓子を囲み談笑していました。
「ハッピーハロウィン……あ、リシェロさんだ!今日の格好似合ってるね!」
「リシェロさん、ハッピーハロウィン!がおー!」
「ありがとうございます、リクさんリサさん。がおーです」
「あらあらリシェロさん、こんばんは。そちらのお嬢さんは今夜のごちそうかしら?」
「入口あたりで迷っていらしたので、ご案内いたしました。がおーです、頭から食べちゃいます」
「まあ、怖い!案内ありがとうね」
店員さんや、お店の中にいるたくさんのお客さんに挨拶をして回る詩人さんの、ふわふわの尻尾の飾り……がどこから付いているのか探しますが、金具やベルトはどこにも見当たりません。
「このお祭りには、時に『本物』が紛れていることがありますが、ご心配なく。先程紡いだリシェロノ詩が、貴女をお守り致しますから」
微笑んで語る口には、本物そっくりの鋭い牙――いえ、もしかしたら。
血のように赤い瞳をぎらぎら光らせ、詩人は私に囁きました。
「ようこそ、小さなお客人。Cafeマルメローゼハロウィンパーティーへ」
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イラスト・デザイン提供→やだやださん
user/28691939
ありがとうございます…!
リシェロ(アフターの姿)→
illust/103791098
※リシェロは姿を自在に変えられるため、耳と尻尾は本物です。
※エンカウント歓迎です。遊んであげて下さい。
2023-10-16 10:13:44 +0000