この度配信が終了した炎神戦隊ゴーオンジャーは単純明快な王道のストーリーというだけあって、登場人物は非常にデフォルメの利いた面子だった。ゴーオンレッド・江角走輔は歴代シリーズのなかでも屈指の『絵に描いたような熱血漢』。後先考えないしドジは踏むけど決めるときはきっちり決めるので子供の受けはかなりよかった模様。更に半ば禁じ手の『動物+乗り物』モチーフとなったメカ枠の炎神たちも、システムと演出で大改革を成し遂げた立役者。ここまでやって面白くないはずがないのだが、今後同じコンセプトの作品があらわれるのだろうか。
これまでいろいろな展開を見せてきたスーパー戦隊の中にあって、ゴーオンジャーはそれ以前と比べて新機軸が多いのが目を引く。本作のキーアイテム・炎神ソウルは、なりきり玩具とロボット玩具を仲介する凝ったアイテム。関連商品ほぼすべてに対応したことでコレクション要素を発展させたのは勿論、本編でも効果的に演出されたことで価値のある代物に仕立て上げたのは白眉である。
もう1点面白い部分がある。先に述べた炎神や、敵であるガイアークの連中が『異次元世界の住人』と定義されたのはさほど珍しいアイディアではないが、ゴーオンジャーの世界観では侍や妖怪やサンタクロースも『異次元世界の住人』とされている点にある。いずれも今では歴史上ないし架空の存在と化しているが、ゴーオンジャーの世界では彼らは『間違いなく存在する』のである。当時話題になったマルチバース理論に着想を得たのかもしれないが、このアイディアは秀逸だったようで、後に仮面ライダーディケイドやウルトラマンゼロがこれに続く形になっている。ゴーオンジャーはそこに通じる『道』を作っていた訳で、彼らが歩んだ道は実は無数の次元に通じる分岐点だったことになる。地味にすごいことだ。
2023-08-21 13:47:36 +0000