フジリュー版#208

はるめ

前回なんと陛下が赤毛の親友の諫言を蹴ってしまったため、一体どうなることやらとハラハラしていたら、今回繰り出された最終手段が「喧嘩を知った姉さんの悲しむ顔」!! これは覿面でした。しかも、あんなに泣いてまで激昂したのは、陛下もこれが喧嘩ならまだしも、完璧な勝利を求めるあまりの恥ずべき「弱い者いじめ」になってしまっていたことに気づいていたからでしょうね。
ここぞ、という時の原作と違い、フジリュー版のキルヒアイスはわりとしょっちゅう会話するくらい出ずっぱりだったので(笑)、ちょっとインパクトが薄れちゃったのかな? とも思いましたが、姉上まで引っ張り出したことで、フジリュー版ではさらに深く主人公ラインハルトの人間的根幹へ迫り、かつ作品としての一貫した描写に成功しています。
ただ大人のキルヒアイスが同じく大人の姉上をお連れするんじゃなくて、まず舞台が切り替わる。まさしく#001で3人で遊びに行った自然公園、そして#120でキルヒアイスを葬ったのもここであると明らかになりましたね。そこでは3人の姿も遠いあの日のままに戻る。この光景は#009でキルヒアイスが「あとはなにもいりません」と答えた時に思い浮かべたものでもあり、#145でラインハルトさまが時のページを繰ってやり直したかった時点でもある。つまり赤金の原点とも言える思い出で、この輝く幸福を取り戻す力を欲して、二人は手を携えて戦いに身を投じた。そして今やラインハルトさまは銀河帝国の皇帝にまでなったというのに、生涯で最もまばゆく幸福だったのは、姉上と親友と一緒にいた、二度と戻らないこの日々である。彼の本質(=フジリュー先生の描いてきたもの)が、まったく変わらず一貫しているのがよくわかります。

また、邪道ですが、この場面のみ、本当に「死せるキルヒアイス」が現れて、ラインハルトさまの内面世界に干渉した、と解釈することもできなくはなさそうです。理由は、ラインハルトさまが戦闘や発熱で一時的に死者の世界へ近づきすぎてしまったため。それをキルヒアイスが帰してくれるの。

ああ、それにしてもついに、ついに回廊の戦いが終わってしまった……あわわ……アワワワ…………!!

#赤金#フジリュー#感想

2023-08-20 06:52:37 +0000