企画【illust/108902329】
イベント【illust/109743792】
▼こちらの流れをお借りしました
目指すは砦【illust/110206946】
▼お借りしました
蒼生さん【illust/109305857】
鬼哭丸【illust/109305542】
清十郎さん【illust/109034180】
穿孔【illust/108907678】
▼拙宅の
ハルフ&刃角&ハウンスカル【illust/109027052】
▼あらすじ
趨勢は決しつつあった。
劣勢を悟った穿孔たちが蜘蛛の子を散らすように逃散する。
徒軽以上の廉価な機装兵である。設計意図からして捨て駒で、乗せられているのは大方が"札付き"。足軽未満の弱兵かさもなければ二つ心あるような手合いばかりでつまるところ、押し並べて士気が低い。壊乱が始まれば脆いものだ。
「良くないですね」
蒼生がぽつりと漏らす。
元より勝ちを見込める連中ではないが、砦に潜入した霧隠衆のために今少し時を稼がねばならない。
「清十郎、退き口を確保なさい」
蒼生の鬼哭丸が鯉口を鳴らす。出る気だ。
「師匠、ここは僕が」
「いけません」
弟子の申し出をぴしゃりと打つ。予想外だったのか、清十郎は鼻白んだ。
初陣とはいえ、彼とて蒼生の弟子、河霧の嫡男である。雑兵如きは物の数ではないが。
視線の先。サーレットに混じった蒼い魔導騎。
……アレは、良くない。明らかにあれだけ動きと築いた屍の数が違う。
「頼む、と言われてしまいましたからね」
蒼生は柔らかくそう言い直すと、是非を言わせず鬼哭丸を敵陣目掛けて走らせた。
………………
「御免ッ!!」
『う、わっ……!?』
大気を震わせて、剣閃が爆ぜた。
「ほう」
蒼生が声を漏らす。
戦場である。当然至極に必殺を期した──が、どうしてどうして。蒼い魔導騎は蒼生の打ち込みを見事に往なし機体の損壊を避けたばかりか、体幹さえブレさせることなく鬼哭丸に刃を構え正対してみせた。
手練である。久しく見ない領域の。
「ハッ!!」
自然に溢れる笑みを噛み殺して、さらに二太刀。逆胴から返す刀で右切上。これも弾いた。やはり"やる"。だが本命は次。踏み込みながら得物ごと両断を期して唐竹に斬鉄一撃!
『大刃法──……一条斬焔剣ッ!!』
比喩抜きの爆圧が、両者を吹き飛ばす。
「む──ッ!?」
一足一刀の間合いには少し遠く、魔導騎と機装兵が着地した。
魔導騎の刃が炎を纏っている。並の魔剣では受け諸共叩き折られるであろう先刻の一撃を捌いたカラクリはこれか。魔法剣。この刹那に術式を組みながら機体を操ってみせた?
「なるほど」
得心したように頷く。
「──"二人いる"。それがそちらの強みですか」
『は……?』
蒼生の言葉に蒼い魔導騎──ハウンスカルの操者、ハルフは思わず間の抜けた声で返した。
「一流の操者と一流の術者。連携にも隙がない。となれば、あとは単純な数の暴力だ。雑兵では言わずもがな、如何な達人でも同等の相手が二対一では分が悪い。いやはや、技の冴えもさることながら何よりその一心同体ぶり。よくぞ練り上げたものです」
流暢な弁舌に今度こそハルフは戦慄する。
今の数合だけでそれを悟ったのか。彼は"達人の眼力"などというオカルトには懐疑的だったが、それを差し引いてもデタラメな洞察力だ。
ハルフの膝上で蒼生が言うところの一流の術者……刃角が視線を鋭くする。
『……霖雨蒼生か。刀鬼に最も近いと言われた男』
「王国にまで我が武名が轟いた……わけではなさそうですね。大十島の出ですか」
『尊越幕府が臣、細河が一子……刃角。今は王国に刀を預ける身だ』
「は、これはこれは」
戦法から資質、果ては出自まで一から十まで変わり種。
「──面映ゆい」
鬼哭丸が切先を向け、腰を落とす。
さて、霧隠衆が脱出するまであと何合"愉しめる"か。流石に仕留められるかは怪しいか。
敗けるなどとは露ほどにも思わない。なぜならばこのもののふ、既に"達人"なぞという俗な言葉で済む領域にはとうにいない。
「霖雨蒼生、参る」
『……王国貴族ブレアクア伯爵が子、ハルフ。お相手しましょう』
赤の戦鬼が地を蹴り、青の騎士が迎え撃つ。
グリンデル城砦を巡る三勢力の攻防も、佳境を迎えようとしていた。
※問題ありましたらパラレル&スルー、あるいはご連絡ください……!
2023-07-26 16:26:26 +0000