【幻ロボ3】過去からの陥穽【交流】

堕魅闇666世

宿六さんillust/108907439
吹雪さんillust/109998714

堕魅耶へのお弁当配達illust/110028569

の続きのお話です!

今度は城砦内部への潜入を試みる
堕魅耶illust/108973795
の前に立ちはだかる
ラザロさんillust/109989415

巧みな言葉と豊富な知識が侵入者を追い詰める・・・!



「ああ?堕魅耶か?奴ならまたすぐに出て行ったぜ。
今度はグリンデル城砦を攻めるとかなんとか。
ほら、お前さんが川沿いで哨戒機を撃墜しただろ?
アレで空いた索敵の穴から、川伝いに砦の中へ通じる
用水路を使って中に侵入するんだとよ」
「おいおい、勘弁してくださいよ堕魅耶の旦那・・・
結局、どっちの本丸に飛び込むかが
変わっただけじゃねぇですかぃ」
大兜鎧蔵から行方を聞いた宿六ががっくりと肩を落とす。

「届け物と言ってもただのお弁当です。
ご無理をなさらずとも宜しいのでは?」
吹雪の言も尤もだが・・・
「いんや。頼まれたからにはやり遂げさせてくれや。
それに・・・あの御仁。
一人にするのはどうにも危なっかしくてなぁ」
やれやれ、と言いたげに後ろ頭を掻く
気怠げな所作とは裏腹な言葉に、吹雪が控えめに笑う。
「お節介な方。でも、素敵だと思います。
元はと言えばうちの店長の依頼ですから、
私もご一緒させてくださいな?」

・・・

「川沿いで消息を絶った哨戒騎、
それ自体が侵入者の存在の証左です。
何も驚くことはございますまい?」

水路からの城砦内部への侵入自体は成功したが、
給水室へ上がってからが問題だった。
共連れのスシヘイたちが、瞬きひとつの合間に切り伏せられる。

「おっと、失礼。私はカエリム王国国境警備騎士、
ラザロ・ペティシュと申します。以後お見知り置きを。
海を越えてなお、勇名高らかなる南洋の麒麟児、堕魅耶殿。
お会いできて光栄です」
息ひとつ乱さず零吟愚霊武に相対する白銀の魔導騎、
フェリクスが芝居がかった所作で開戦礼をとる。

「俺を知っているのならば敢えて返す言葉はないな。
・・・道を空けろ」
勢いよく得物を振り抜き、スペルドラムに回転を加える。
威圧的な唸りが、回転数の高まりと共に音階を上げていく。
「ええ、ええ、よく存じておりますとも。
これでも私、知識欲が旺盛でございまして。
敵将の情報には精通していると自負しております。
貴方のその傷の所以も、亡くした奥方の由縁も・・・ね」

無機質な魔導騎の甲冑の向こうに、
薄ら笑いを浮かべる敵手の顔を幻視する。
「お喋りは終わりだ」
唸りを上げて振り抜かれる魔戦鎚・爛華璃掘惧。
余裕を持ったバックステップで間合いを外したフェリクスが
鋭い踏み込みからフェンシングの要領で刺突を放つ。
奔る鋒が自在に跳ね、狙いを絞らせない。

口先だけの男ではない。
それを認めた堕魅耶は軽率な反撃を図らず守りに徹する。
展開した戦鎚が前面を覆い、ラザロの仕掛けを跳ね除ける。
「お見事!守りと攻めを瞬時に切り替える変幻自在の剣。
私も初めて対峙する太刀筋です。・・・が───」
床を削りながら奔る回転鋸の一撃を、宙に刻まれた残光が受け止める。
「守りの剣は、私の得手とするところでもございます」
反対側からも挟み込むように重ねられた剣閃が堕魅耶の動きを封じる。
危機を感じ戦鎚を閉じた瞬間、狙い澄ました速射弾が愛機の装甲を穿つ。

止むを得ずスペルドラムを魔力弾に切り替え、
魔弾の速射で応戦するが、右手のシールドブレードによる防御と
左手のバルカンを併用する敵手に対し、有効打が通らない。
攻防一体を成す反撃の手札が必要だ。で、あれば・・・
「そう!弓を使いますね!」
───読まれていた。
投げ放たれたシールドブレードの一本が開いた戦鎚の隙間に差し込まれ、
光の軌跡が爛華璃掘惧の回転も閉鎖もまとめて封じる。
腕を欠く左の死角を的確に突いた踏み込みで、フェリクスが迫る。

「・・・これは知りませんでしたね」
零吟愚霊武の半身を覆う外套が、風のない屋内で不気味にざわめく。
至近に肉薄したフェリクス目掛け、秘められた牙が解き放たれる。
「自在鞭!なるほどなるほど、そういう手を隠していましたか!!」
欠けた左腕の代わりに仕込まれた隠し武器。
堕魅耶の意識により操作される触手のごとき多条鞭が
フェリクスの右腕を絡めとる。

もう一方の腕が鞭を切り裂くよりも迅く。
しなる隠し鞭がフェリクスを投げ飛ばし、扉を破って吹き飛ばす。
「・・・非礼をお詫びいたしましょう。
角を欠き、腕を無くした貴方の実力を甘く見積もっていました。
・・・その力、太閤の手先で終わらせるにはあまりに惜しい」
戦鎚を構え直し歩み寄る堕魅耶に、嘯くラザロの声音が変わる。
「貴方とて、大十島に覇を唱えるべく立った群雄の一角。
ここで、カエリムを利用するのも、選択の一つではありませんか?」

振り上げた戦鎚がピタリと止まる。
・・・一理ある。
俺とても、獲猿の太閤に捧げる忠誠心などはない。
なんとなれば、奴を地に引きずり落とす野望を抱いて戦っていた。
だが・・・
「妻が捨てた国に、今さら肩入れする謂れはない」
誘惑を振り解くように戦鎚に力を込めたその矢先。

「それは残念。・・・貴方とは、ここでお別れです」
四囲を走る足音。一斉に構えられる弩。目配せするまでもなかった。
「おや。私が戦場で決闘に興じるような男だと思いましたか?」
孤立無援で包囲され、抗う術はない。

もはやこれまで。戦鎚を手放しかけたその背に。
「堕魅耶の旦那!これ以上の無茶は止してくださいよ!!」
耳馴染んだ宿六の声と共に、屋内を白銀の吹雪が包む。
「独断専行はこれまでにしてくださいね?
次に無茶をしたら・・・氷漬けにいたしますよ」
吹雪は嘘をつくような娘ではない。
穏やかな声に滲む『本気』に、さすがの堕魅耶も背筋が凍る。

「・・・胸に刻んでおこう」
既に、氷塊で手足を拘束され、
来し方の水路を遡上させられながらも。
堕魅耶の胸には、久しく忘れていた暖かな感情が去来していた。

何もかもを失ったと思っていたが。
その果てで再び得るものも、またあるのだと。

#【幻ロボ3】#【大十島】#【北の嵐・東の刃】#幻ロボ3交流

2023-07-19 15:34:07 +0000