ファセル・ヴェガエクセランスは1956年の発表後、少し間を置き1958年から生産が開始されたファセルベガの大型クーぺ illust/61949728 ベースの4ドアハードトップでした。
エクセランスは、テールフィン、ラップアラウンドのフロントガラス、Bピラーのないハードトップルーフなど、当時のアメ車に典型的に見られたいくつかのスタイリング要素を備えています。これはベースとなったファセルの大型クーペが対米輸出を念頭に置いた車だったため、その延長線上と推定されます。しかし、全体的なデザインは、積み重ねられた4灯ヘッドライトと非常に低いシルエットはヨーロッパ的であると考えられています。その低いベルトラインと比較的高いガラス張り部分は、50年代後半に主流となり、60年代を通じて続く自動車デザインの潮流を予測したものと言われています。
内装も豪華で、革製のシート、スイスの時計メーカーのジャガー・ルクルトが提供する人造ウォールナット製のダッシュボード、センターアームレストの後ろには香水瓶、クロームハンドルのブラシとコームで構成されるメイクアップキットを備えています。
エクセランスはEX、EX1、EX2の三タイプに分けられ、EXはクライスラーヘミ・392エンジン、EX1はクライスラーB・361ウィッジヘッドエンジン、EX2はクライスラーB・383ウィッジヘッドエンジンをそれぞれ搭載していました。またエンジン以外にも外観やメカニックにも差異があり、EXはボンネットにエアスクープがあり、EX2では大胆にラウンドアップウィンドウやテールフィンの廃止、1961年からはディスクブレーキが標準装備化(オプションでは1959年から登場)にしています。これとは別に、1956年のパリ自動車ショーの発表時のモデルはクライスラーヘミ・331エンジンが装備されていました。
生産台数はEXは11台、EX1は137台、EX2は8台と合計156台と非常に少ないものでした。これはエクラレンスの新車価格はシトロエンDSサルーン4台分ほどに匹敵するもので、英国のロールスロイスシルバークラウドⅡやラゴンダラピード、ドイツのW100型メルセデスベンツ600の代替車ないし、ライバルでした。このほかパワーステアリング、パワーブレーキ、電気望遠アンテナ付きラジオセット、電動ウィンドウ、クライスラー製エアコンやケルシー・ヘイズ製ワイヤースポークホイールなど、生産期間中に徐々に利用可能になったオプション装備を注文することで、価格はさらに上昇する可能性がありました。
今回のイラストである量産仕様のエクセランスの最初のモデルであるEXは先述のように排気量6.4リッターのV8クライスラーヘミ・392エンジンが装備されていました。このエンジンは360英国馬力を発生し、特にファセルベガHK500およびクライスラー最上級モデル/ブランドのインペリアルと共有されました。変速機はポンタ・ムッソン製4速MT、またはクライスラー製トルクフライト3速ATのいずれかを注文できます。後年の路上テストでは、どちらのギアボックスでも同等の性能を発揮することが示されました。公式には最高時速は203キロと言われていますが、実際には時速225キロを記録しました。
何年ぶりの新作だろうか……。
2023-07-16 03:12:10 +0000