【幻ロボ3】迷いながら、間違いながら【交流】

堕魅闇666世

堕魅耶illust/108973795
が単身敵陣に突入、
強敵ルムガンillust/109743792
と対峙します。

既知設定ありがとうございます、
阿尼律陀さんillust/109486908
助力お借りしました、
大兜鎧蔵さんillust/108909847



「よもや、頭上をも警戒せねばならぬとは。
油断大敵、この空は既に、我らだけのものにあらず」
ピストン空輸の途上、上空に過る一筋の光。
イルファの頭上から、隕石のように猛然と落下する
桜色の光めがけ、ドレイケンが光弾を放つ。

渦を巻く燐光はこれを撥ね退け、
ボルソルン連合の本陣へと真っ直ぐに降り注ぐ。
本陣を守る予備戦力として控えていた
ヴァリャギ数体を薙ぎ倒しながら着弾した流星を中心に、
桜吹雪のように砕けた結界の断片が吹き荒れる。

装甲をズタズタに刻まれたルーンギガントが次々に斃れ、
穿たれた陣の空隙から、一体の機装兵が立ち上がる。
仕掛け戦鎚を振るう隻腕の機装兵。
堕魅耶が駆る零吟愚霊武に他ならない。

本陣へと単身殴り込みを仕掛けた命知らずに、
恐れを抱く臆病者は連合にはいない。
不遜な挑戦者の矮躯めがけ、吠え猛る
ルーンギガントの巨体が犇めきあって押し寄せる。

巨壁のようにのしかかる猛者の大群を前に、
堕魅耶もまた一歩も引かず、仁王立ちに迎え撃つ。
得物たる魔戦鎚、爛華璃掘惧を地に這わせ、回転を加速させる。
天まで轟くウォークライがビリビリと肌を震わせる。
大地にみなぎる戦士たちの気迫を受け止め、
堕魅耶もまた闘志を烈しく燃やす。

そうだ、この緊迫、この充実、この歓喜、これこそが。
我が魂の在るべき場所だ。
傷ついても、失っても、終に背を向けることができなかった。

唸りを上げるスペルドラムが、幾重にも重ねる
エンチャントは『引力』の力。

さぁ、来るがいい。俺はもう逃げない。

殺到するルーンギガントの最先鋒が振りかぶる巨大な戦斧が、
全体重をかけて振り下ろされる。
ヴァリャギの全高、15m。対する零吟愚霊武は僅かに6m。
圧倒的な規模の差を顧みることなく、
堕魅耶は戦鎚を真っ直ぐに突き上げる。

竜をも屠る我らの剛腕、知らいでか。
・・・叩き潰してくれる。
突きつけられた挑戦に真っ直ぐ応えた渾身の打ち下ろしが
激突する寸前で、爛華璃掘惧が展開する。

張り巡らされた結界の高速回転がバトルアックスに込められた
運動エネルギーを絡め取り、受け流す。
そればかりか、戦鎚に込められた引力場が戦斧を、
そしてそれを握るヴァリャギをも捉え、樽の底の一穴の如く
大渦に巻き込み引き寄せ、呑み下す。
行き着く先は・・・猛然と回転する結界刃の渦の中。

斧も、掌も、肩も胴体も頭も何もかも。
金属が捩じくれ、ひしゃげ、引き裂かれる狂騒的な破砕音と共に
ミキサーにかけられて、木端微塵に砕け散る。

文字通り粉砕された一番槍の無惨を目前にしてなお、
戦士たちの狂熱は冷めることを知らない。
戦友の死を前に一層烈しく怒り狂う戦士たちが、
堕魅耶めがけて雪崩を打って殺到する。

横凪に振るわれた金棒の一撃を飛び越しざま、
天地逆転した姿勢から回転する刃で首を刎ねる。
面ごと粉砕せんと迫る大楯を正面から撃ち抜いて、
その胴体を渦巻く穂先が刺し貫く。
間断なく放たれる魔弾の前に、間合いに入る
ことすら叶わず蜂の巣になって崩折れる。

もっとだ。もっと、もっと、もっと攻めてこい。
いずれ戦場にしか魂の置き場がないのならば。
・・・ここでこの命、燃やし尽くすまで。

宙を舞うモアヴァイキング。巨石のように降り来る。
戦鎚を突き立てると同時に展開。
斥力場の放出で内部から爆砕する。

「ディオニダスに敗れてなお、死にきれぬか麒麟児よ!」
開かれた視界を、一際巨大な機影が覆う。
「ならばこの俺様が!貴様に破滅をくれてやる!!」
連合を率いる指揮官、『白熊のオラフ』、その乗機ルムガン。
裂帛の気合いと共に振り抜かれた渾身の一撃は、
零吟愚霊武の守りをも打ち破る。

鞠のように跳ね飛ばされた機体が真一文字に跳び、
ホノトスの城壁をクレーター状に陥没させる。
「・・・知っているなら話が早い。ディオニダスを出せ。
お前らとて、生かしておくつもりはないのだろう?
俺が叩き潰してやる」
瓦礫の中からよたよたと身を起こす零吟愚霊武の元へ、
悠然と歩み寄るルムガン。
「死を恐れぬ者と、死を望む者とは似て非なる。
今の貴様では奴には勝てん。
否やと言うならば、まずは俺様を倒して見せろ」
「・・・その言葉、反故にはさせんぞ」

満身の妖力を込めた戦鎚と、ルムガンの両刃斧。
幾合となく鍔競り合って火花を散らす。
膂力では叶うべくもない。回転させた戦槌に受け流し、
反撃の機を伺うが歴戦の勇士は容易くはない。
「なるほど。欠け角たりとて麒麟の端くれ」
長くは持ち堪えられない。仕掛けるならば、今しかない。
戦鎚を展開、渾身の妖力を込めた斥力場で大きく跳ね飛ばし、
全力を込めた刺突で懐へ飛び込む───

「しかし・・・その妖力、あとどれほど保つ?」
穂先に絡みつく、ルムガンの左腕から伸びるルーンチェイン。
戦鎚と鎖に込められた両者の力が烈しく鬩ぎ合う。
・・・かつての俺ならば、あるいは喜び勇んで
受けて立ったところだろうが・・・

爛華璃掘惧を包む光が明滅し、徐々に力を失っていく。
・・・ここが俺の限界か。
だが、死力を尽くした戦いの果てで
妻子の元に旅立てるのならば、それも───

「堕魅耶殿!左様に死に急ぐ必要もありますまい」
巨人たちの戦場に身一つで飛び込む生き地蔵。
「ヴリさん!ご協力願います!」
阿尼律陀の周囲から現れた無数の触手。
オクトヴリトラの触腕がルーンチェインを振り解き、
力尽きた堕魅耶を回収する。

「骨を拾いに行くのも面倒だ。もう少し持ち堪えてくれよ」
大兜鎧蔵の声と共に、ダイムソウの砲撃が戦場に降り注ぐ。
堕魅耶の突出で前線が緩んだ機に乗じ、前線を押し上げたのか。

「かの竜に、負けたままでは終われないでしょう。
拾ったからにはその命、あたら擲つべきではありませぬ」
敢えて追う姿勢を見せず、引き下がる堕魅耶たちを見送る
オラフと視線が交差する。
「まだ俺に、生き恥を晒せと言うか」
そしてこの地獄の底でもがき続けろ、と。

「そうです。少なくとも、今顔を合わせたとて、
あの奥方が再会を喜ばれると思いません」
それを言われれば、おしまいだった。
「・・・違いない」
結局、この道も間違いだった。
・・・行くべき道を見出すまで、
この無様な悪足掻きを続けるしかないらしい。

「いいだろう。望まれたからには、生きてやる」
それも案外悪くはないと、思える自分を今は肯じよう。

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2023-07-15 10:21:24 +0000