東京襲撃人は正義の味方です。
罪人はどんな人であれ、日本全国に点在する能面達の監視により始末されます。
*
「ほら、ちゃんと持たないと……そうそう、ズレないよう真っ直ぐ、しっかりと持って標的を定める……意識すれば簡単だよ」
「あ……あ――」
「やめろお!! 俺には家族がいる!! わかるだろ!! お前もそのはずだ!! そんな馬鹿な事はやめろ!!」
「君が止めることはないさ、サダハル、言うのを忘れていたが、彼は君を虐めていたのにも関わらず、君より豊かな家庭で育ち、虐めていた罪を反省することも無く、君とは反対に順当なステージを踏んで、今じゃ親戚のコネを使って常務取締役だ、娘さんもいるが、可哀想なことに君達の仲を知らないそうだ……さあどうする? 撃たない手はないよね……さあ、しっかりと握って、ズレないよう、一発で仕留めるんだ……これは然るべき処罰であり、無駄な拷問は僕らの思想に反する、だから一発で殺さなきゃいけないんだ、いいかいこれは正義だ、僕の為じゃない――君の為の新しい一歩を歩むための、犠牲であり贖罪であり、君自身の為の正義なんだ、思い出してきただろう? さあ、落ち着いて、深呼吸……深呼吸……深呼吸――落ち着いてきたようだね、そう、呼吸が乱れていると余計に苦しませてしまう、そうしたらもう簡単だよ、引き金を引けば完了だ」
しかし、彼は外した。
肩に当たり、惨たらしく呻く声が教会に響く。
――嗚呼可哀想に
彼の低い声と共に、脇のホルスターからM36を取り出し、脳天をぶち抜く。
「まあ……誰でも最初は失敗するものだからね、大丈夫安心して」
「無理だ……私には……もう」
震える手で落ちそうになるグロックを阿部カヲルは支えながら、耳打ちする。
「大丈夫さ、まだこんなに練習できるんだから」
「――」
彼は耐えきれず叫び、一刻も早くこの粛清が終わることを願いながら引き金を引くのだった――
*
大聖堂に集められた老若男女は、罪人である。
虐めや万引き常習犯の学生数人。
麻薬売買の輩。
他人を見下す事でしか生きる喜びを知らない女。
自分の私利私欲のためでしか盗みを犯さない男。
ポイ捨て、歩きたばこ、美人局、立ちんぼ――あらゆる罪人が一列に並び、痛みに耐えきれず、泣き叫ぶ。しかし中には喉が枯れているものもいた。
彼らは一人一人罪の回数が違う。その数によって、まず爪を剥がす。それでも足りなかったら指を切り。まだまだ足りなかったら腕を落とす。
彼らは足の腱が切られているので歩くことさえままならない。
2023-06-22 11:23:00 +0000