「ぐぬぬぬ……コンちゃんめ、頭に乗ってぇ……、と、そろそろいいかな」
「あん!?」
必死の後退を繰り返していたブーメラン・キティが、急に声音を変化させた。
焦燥感の滲んだ追われる者の表情が、追う狩猟者の貌へと切り替わる。
「飛び道具持ってるのに、刀と斬り合うのはバカだけよね、と」
「はぁぁぁぁぁ?ちょ、逃げるばかりの猫女が何言って──!?」
茜が本能的な危険を感じ、追撃を中断して飛び退る。
何だ、この猫女。何を仕掛けて来る気だ。
魔法少女の全感覚を動員し、茜は次に来る予測攻撃パターンをエミュレート。でも、どれも茜の防御を崩せるとは思えない。
「コンちゃんのカタナは2本。《同時に防げる飛翔体はせいぜい2つ》よね」
「っッ!?」
キティが何の前ぶれもなく、両腕を振り上げた。そこから生成された魔力ブーメランが、銀行ロビーの天井めがけ飛翔。大きな吹き抜けの上に、開いているのは広大な採光窓だ。魔力のブーメランは、そこに張り巡らされていた大きく重いガラス窓を──
粉々に、爆砕した。
「きゃ、ぁァァァァァァァァァァッ!!?」
超人的な反応速度を誇る魔法少女、茜。
しかしさしもの彼女も、この時ばかりは素の自分、14歳の少女に戻って悲鳴を上げた。天井窓を砕いた魔力ブーメランが2つ、茜の首を狩ろうと戻ってくる。何千、何万というガラスの凶器へ変わった煌めく破片を従えて!
「ねー。スピード型能力なんて、クソの役にも立たないよね。どこ狙うつもりか分かっていればね」
そして、この攻撃を放った女、キティ。彼女はその高速移動能力で、一瞬で茜の背後に移動する。上空から襲って来るブーメラン、ガラス片、そして茜の背後を襲う爪!
「さ、コンちゃんなら《どれを防ぐ》?」
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Tukiさまが原案を書かれた、魔法少女「茜」と悪の魔法少女「キティ」。
その二人の対決を描いた、拙作の全年齢小説「メスガキ魔法少女の戦慄」から、茜とキティの対決シーンを描きました。
ご依頼主さま、そしてキャラクターの原案はTukiさまです。ありがとうございました。
「メスガキ魔法少女の戦慄」
novel/17537584
2023-04-26 12:17:17 +0000