【叛虐機換】エヴァンジェリンの決断

堕魅闇666世

セレンティアさんからの提案illust/107277322
への回答となります。

オーラディオンillust/106809308

ガルガンディスillust/105833936
アルヴァレイジillust/104953937
の激闘をよそに、

エヴァちゃんが下す決断とは・・・



「ダァァァミィィィアァァァァァァァアアアンンン!!
待ってたぜぇ!テメェのしたり顔をブッ飛ばすこの瞬間をよぉ!!」
その巨重をものともせぬ暴力的な急機動で軽々と迎撃を掻い潜り、
ガルガンディスのプラズマキャノンがぶち撒ける真紅の凶光が
オーラディオンの蒼炎に突き立てられる。

およそ、あらゆるリヴェルザインを容易く焼滅せしめてきた
必殺の一撃はしかし、竜の巨影を揺るがせるにさえ至らない。
バルディロの全身に走る戦慄が、かつてない危機を訴えている。
軋みを上げる躯体に鞭を打ち、強引に身を捩った機体の片翼を、
放たれた反撃の咆哮が掠め飛ぶ。

解放された竜の顎門から吹き荒れたのは、オーラディオンが
纏うそれと同質の、蒼白のザイン粒子フレアの奔流。
あらゆる力を飲み下し、触れる全てを灰塵に帰す絶滅の焔だ。
後方に控えていた麾下のアグレッサーが、周囲の地形ごと
綺麗さっぱり焼き尽くされる。

その徹底した破壊を目の当たりにし、バルディロは歓喜に震える。
「ヒッ・・・ヒ!ヒハハハハハハハ!!面白ェ!!
初めてだぜ!こんなにおっかねぇ相手はよぉ!!
さぁ、テメェを潰したら何ポイント稼げるんだァ!!?」
ビームクローを展開し、猪突するガルガンディスに、
アルヴァレイジ・デモンズプロミネンスが合流する。

「い〜ねぇ、盛り上がってんねぇ!俺っちも混ぜてくれよ!!」
「知るかボケ!勝手に突っ込んで勝手に死ねや!!」
言いあいながらも、狙いもタイミングも完璧に同じ。
側面へ左右から分かれて回り込んだ両機が繰り出す一撃が、
長く伸びたオーラディオンの尾を分断する。

「そうですか。セレンティアさん、貴方も私と袂を分つのですね。
いいでしょう。貴方が信じる救済の道が、人々を救う
希望となりうるものか。見届けさせていただきます」
人類の成長を信じ、自ら踏み台になろうとするALICEと、
人類の行く末に諦観を抱き、新たな導きたらんとするセレンティア。
異なる道を選んだ両者の戦いは激しさを増していく。
・・・当事者達の想いを、置き去りにしたままで。

・・・

「お姉ちゃん。私、頑張ったよ。
お姉ちゃんみたいに立派な聖女様になれるように」
大好きだった姉の背を、ずっとエヴァンジェリンは見守っていた。
あくまでもセレンティアのスペアだったはずの自分が、
エクステラ・グレイスを発現したことで、平穏は破局を迎えた。
教団内の対立の芽を摘むためにセレンティアは追放され、
エヴァンジェリンが代わりに組織の顔役を務めることになった。

以来、セレンティアの思い出は、彼女が過酷な政争を
生き抜くための道標になった。
お姉ちゃんならどうしゃべるだろう?
お姉ちゃんならどう振る舞うだろう?
戸惑いを乗り越える時、いつも胸の中で姉の面影に問いかけていた。

「でも・・・不思議だったんだ。
あんなに大好きだったお姉ちゃんが、
私の力のせいで居なくなっちゃった。
なのに・・・なんで、私は悲しくないの??」
夢にまで見た、姉と再び生きていける未来を前に、
エヴァンジェリンはどうしてもそれが聞きたかった。

躊躇いに震える妹の掌を優しく握り、セレンティアは穏やかに囁く。
「お前の力には、素晴らしい可能性がある。
お前には、お前が得た福音を憎んでほしくはなかったんだ。
だから・・・姉さんが、お前の悲しみを消したんだ」
それは、きっと、確かに愛だったのだろう。

エヴァンジェリンが、セレンティアの手を振り解く。
「そんな悲しいことってないよ・・・お姉ちゃん。
私、ちゃんとお姉ちゃんのために泣きたかった!!」
ああ、本当に、お姉ちゃんは優しい人だ。
本気で私の幸せを願ってくれている。
心の底からみんなを救おうと思ってくれている。

・・・でも。どんなに純粋な善意であったとしても、
それが総ての人間に幸福をもたらせるわけではない。
三組織の思惑が蠢くシェルターポリスの中で、
エヴァンジェリンはそれを学んだ。

「お姉ちゃん。私一人じゃ、決められないよ」
所在無げに彷徨っていた両手が、ローブの裾を
ぎゅっと掴み、締め付けるように胸元へ手繰り寄せる。
「みんなの未来は、みんなで決めなくちゃ」

それは、子供じみた言種だったかもしれない。
「それでは駄目だよ、エヴァンジェリン。
永遠に結論は出ない。そこにある希望の道を選ぶことさえ、
互いに足を引っ張りあって叶わない。
それが人間の限界なのだと、私は身を以て知った。
だから、私は彼らに代わり決断を下すことに決めたんだ」
「───それじゃ、ALICEと一緒だよ、お姉ちゃん」
それでも、エヴァンジェリンの目に迷いはなかった。

「勝手に未来を決めつけて、勝手に絶望して、
これが一番なんだって自分の答えをみんなに押し付けて。
それって、私たちがしてきたことと、一緒だよ」
セレンティアは、あえて反論しようとはしなかった。
例え自分の思い通りではなくとも、それもまた大切な妹の心なのだ。
強引に従わせるようなことは、可能ならば避けたい。

「悲しみや痛みや苦しみがなくなれば、
私たちは本当に幸せになれるのかな?
私は今、悲しいよ。お姉ちゃんがいなくなったことを
悲しめなかった私が悲しい。
そんな当たり前の気持ちがわからない自分が怖い。
・・・いつか、誰かの悲しみを感じることも、
想像することもできなくなりそうで・・・
ALICEのようになってしまいそうで、怖い」
二人の間に開いた空隙を再び埋めるように、
エヴァンジェリンは手を差し出す。

「お姉ちゃんが私を連れて行くんじゃない。
私がお姉ちゃんを連れて行く。
お姉ちゃんが感じた絶望を、私がひっくり返して見せるから。
知らないでしょう、お姉ちゃん?
シェルターポリスから、このエクステラまで、
力を合わせて戦って・・・みんな、確かに変わったんだよ」

それは、セレンティアでさえ見たことがない、
自信たっぷりのとびきりの笑顔だった。

「さぁ、一緒に行こう。世界は、希望でいっぱいだよ!」

#叛虐機換リヴェルザイン#【叛虐機換】ストーリー#【叛虐機換】エクステラ奪還

2023-04-21 03:01:59 +0000