【叛虐機換】武骨者の慕情

堕魅闇666世

「ふむ。これからは、タルタリヤ『巣窟』砂丘と呼ぶことにしよう」
「先輩!?呑気なこと言ってる場合じゃないよ〜〜〜!!」
一面の砂漠の奥で見つけた巨大建造物は、
アグレッサーの巨大工廠、『ネスト』であった。
巡回するアグレッサー部隊に発見された強行偵察部隊は、
多数のアングリーに追撃を受ける。

全速で後退しながらも反撃を試みるドーンブリンガーとフィデス改。
ライフルガンとスナイパーキャノン、
ヘビーマシンガンとマイクロミサイルが追手を減殺するが、
後から後から合流する増援の数はそれを上回る。

「このままじゃベースキャンプにも戻れないよ!
どこかで振り切らないと・・・!」
焦りを募らせるアルマの背後。
「待ち伏せ・・・!?」
待ち受けていたゼクトリケラの3本角に溜め込まれた
エネルギーが火花を散らす。

「頃合いだな。ミオカ、頼めるか」
「宜しい。承りましょう」
阿吽の呼吸で突出したのは、巨大な双腕重機を思わせる
格闘戦型重リヴェルザイン、タヂカラヲ。
偵察に回ったアインハルト達の後詰めとして埋伏していた
ミオカ機がゼクトリケラを後方から抱え上げ、軽々と投げ飛ばす。

リヴェルザインに倍する巨体をものともせぬ圧倒的なパワー。
叩きつけられたゼクトリケラが、起き上がろうともがくが
それは適わなかった。
「さて。これで終わりということはないでしょう。
勿体をつけずかかっておいでなさい」
ゼクトリケラを、文字通り叩き潰したのは
鎖で繋がれた円柱状の巨鉄塊。
旧い武術で用いられた『サンセツコン』を模したものだというが。

・・・どうにも、縮尺を間違えているような気がする。
アインハルトの疑問をよそに、丸太のような野太い鉄棍が
圧倒的な膂力で振り回され、鈍い唸りを上げる。

巨大な質量のプリミティブな破壊力が猛威を振るう。
嵐のように吹き荒れる鉄塊の乱打が、迫り来るアングリーを
片っ端から薙ぎ倒し、追手を瞬く間にバラバラに粉砕していく。

その無双の活躍を憧れの眼差しで見つめながらも、
アルマはどことなく不満げだった。
「ミオカ先輩、カッコいい・・・!
でもなんか、アインハルト先輩とのその・・・
何も言わなくても通じ合ってる感じ!なんかずるい!!」

そんなアルマに向ける二人の笑顔がまた、
はからずもそっくりで・・・なおさらに悔しいアルマは、
コックピット内で地団駄を踏むのであった。

・・・

「あの頃のお嬢ちゃんが、今やオーダーズのエースの一角とは。
積み上げた経験は無駄ではなかったようだな」
「ふふん!今なら、先輩とだって互角に戦えるわ!
どう?私の新しい相棒、ダーインスレイヴ!
かっこいいでしょ!!」
かつて追いかけた背中に、今は肩を並べるに至った
アルマの成長を喜びつつも、アインハルトの目は
眼下のデカセクト級、プレイヤーへと向けられている。

懐に潜り込んだイノが奮戦しているが、
ちょこまかと逃げ回っては乗機を換えるプレイヤーの本体を
追跡するのは、オグロアスルの機動性では厳しいだろう。
「シェルターポリスへの攻撃を防ぐためにも、
砲塔エリアは制圧しなくてはならない。
・・・アルマ。お前の目が頼りだ」
「OK!そういうことなら・・・アルマにお任せっ!」
リベレーションを宿した蒼い左眼が、討つべき敵を看破する。

「見つけた・・・!ミサイルサイロの側のドゥカティに乗ってる!」
アルマのスポットした標的目がけ、ドーンブリンガーRRが突貫し、
ダーインスレイヴもそれに続く。
追跡を阻むべく放たれる巨大ミサイル群もまた、
プレイヤーの制御によるものか。

一発づつがリヴェルザイン一体分もある特大の誘導弾が空中で炸裂し、
無数の子弾が全天を包んで立て続けに爆ぜる。
「全速で抜けるぞ。遅れるな」
「そっちこそ!私を見失わないでよね、先輩!!」
咲き乱れる爆炎の只中を、曲芸じみた機動で駆け抜ける二機が
猛然とドゥカティに迫る。

「つ、か、ま、え・・・たっ!!」
ダーインスレイヴのプロトナハトムジークと
ドーンブリンガーRRのナイサルト、スナイプモードが
同時に直撃、ドゥカティは爆発炎上するが・・・

「ダメ!逃げられた!!今度は機銃砲塔の中!
往生際が悪いーーーっ!!」
そればかりか。
「・・・ミオカ!避けろッッッ!!」
破壊される寸前に発射されていたドゥカティのドリルホーンが、
セツゲツカの刃を白羽取りで抑える小烏丸の背に迫る。

対応は・・・間に合うまい。
それを許すような甘い敵手ではない。
狙撃は・・・届かない。
よしんば当てたとしても、敵弾の質量を考えれば、
その軌道を大きく変えることはできないだろう。

それでも。失う訳にはいかない。
互いに死をすらも乗り越えて再び見えたのだ。
もう2度と、死に別れるなど御免だ。
できるか、できないかではない。
───やるしかないのだ。

アクセラレートトリガー、起動。
鈍化した時間の中で渦を巻き突き進む
ドリル砲弾の姿をはっきりと捉える。
手を伸ばすその先で、砲弾は見る見る遠ざかっていく。
どれほどにエンジンに鞭を打っても、出力はもう限界だ。

ならば・・・超えるしかあるまい。

「先輩・・・!?」
ドーンブリンガーRRのラッシュエッジの両翼に蒼い翼が広がる。
鈍化した時間の中で立ち塞がる大気を、更なる加速で突き破る。

リベレーション・セカンドステージ、『ダブルアクセルトリガー』。
停滞した時間の中で、ドーンブリンガーRRが限界を超えて加速する。
弾丸をも追い抜く超機動で、砲弾とミオカとの間に残された
僅かな空間に機体をねじ込む。

激しく迸る火花と、撒き散らされる黒い装甲片。
両者の間を異常な速度で駆け抜けた機影に、
セツゲツカと小烏丸が距離をとる。

「自分の機体を盾にするとは・・・感心しませんね。
防ぎきれなかったら、私もろともに貫かれていたところですよ」
常ならぬ憤激を潜ませたミオカの厳しい声に、
フルメタルコートを破損し、無様に転倒した
ドーンブリンガーRRからアインハルトが応答する。
「もう死ぬつもりはない。
お前と再び会うために、ここまで来たのだからな」

真面目くさった顔で言ってのけるアインハルトに、
流石のミオカも平静を保てず赤面する。
「全く、貴方というお人は・・・」
「先輩・・・それってもう・・・告白だよ」
状況を見守っていたアルマの言葉で、ようやく理解を得る。

守りたい、その一心だけで自らを覚醒へと導いたミオカの存在。
それはつまり・・・
「なるほど。どうやら、私はお前を愛しているらしい。
私と共に生きてくれるか、ミオカ」

・・・ミオカは、今度こそ撃沈した。

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2023-04-19 12:28:25 +0000