オタクゆえに怪奇現象に明るいデジたん概念

くろつち@コミティアい16b

トレーニングプランの作成と参考資料(担当バと一緒に見る用のレースの映像記録)が難航し、帰宅しようとしたころにはとっぷりと夜が更けてしまっていた。とっくに明かりも消え、校内に生徒の姿はない。たしかもう門限だったはずだ。

ふと、何の気なしにグラウンドを通りかかると、上向きに耳のそろった一人分の人影が見えた。
こんな時間にまで熱心なウマ娘もいるもんだな、と思って様子を見たが……なんだか妙な雰囲気だ。

彼女はグラウンドのど真ん中にまっすぐ立っているだけで、動く気配が微塵もない。ちょうどこちらに背を向けているもんだから表情も伺えない。
それに距離が離れているもんだからはっきりとは見えないが、よく見ると運動向きのジャージや勝負服ではない、制服姿のように見える。

つまり。
門限も過ぎた夜間に、制服を着たウマ娘が、グラウンドのど真ん中で。
ぴくりとも動かずに。こちらに背を向けている。

……あ。
彼女も、こちらに気づいたらしい。わずかにその耳と尻尾が揺れたのち、
ゆっくりと、こちらに振り向いて————

「てやーーーーーーーーっ!」
「!?」
不意に、素っ頓狂な声とともに大きく両手を広げて飛び込んでくるような姿勢で、よく目立つピンクの髪の愛バが俺の視界を塞いだ。
「デジタル!? どうした!?」
「どうしたはこっちのセリフですよトレーナーさん! 今晩はトレーナーさんのお宅でウマ娘ちゃんたちの闘いの記録をオールするって約束ではありませんかぁ!」

確かに手元のバッグにはさっき選んできた歴史的なウマ娘たちのベストバウトが潜ませてある。だがこれはデジタルをサプライズ的に喜ばせようとわざわざ取り寄せたものであり、彼女の前では片時もその素振りは見せなかった。バレてないはずなのだ。それなのになぜ……。昼間にたまった雑務に忙殺されてた時に流れで約束しちゃったりしたか? いや、だとしたら遅くなった時点で連絡がこないわけはない。
それに今のデジタルの風体は「一大イベント直前でいてもたってもいられなかった」って雰囲気でもない。学園指定のジャージのまま、しかも普段からつけているリボンすらないなんて、まるで「嫌な予感で目を覚ましてそのままここに来ました」って感じで……

あれ、そういえばさっきのウマ娘はどうなったかな——「見ちゃダメです、トレーナーさん」

#Uma Musume Pretty Derby#horse girl#アグネスデジタル(ウマ娘)#non-human#nightmare fuel#horror

2023-04-07 12:24:45 +0000