ローマ軍団兵と幕僚将校

Legionarius
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ローマ軍団兵「クソっ、給料から靴下代まで天引きされてるじゃねえか。何でもかんでも差っ引きやがって、将校どもの賄賂だけでは飽き足らず主計連中がボってるに違いねェ。テント組全員で食糧庫に夜襲をかけてやろうか、いつかひでえ目に遭わせてこの世に生まれ落ちたことを後悔させてやるからな。ブツブツ……」(史実でもよく暴動で将校が血祭りに上げられる)
――
近衛兵は1日2デナリウス貰って16年で退役だ。奴らが俺達より危険な目に遭うか?
都の警備が楽な仕事とは言わないが、俺達は最前線で蛮族に囲まれて目の前で連中の顔を拝んでるんだぞ!
――タキトゥス「年代記」一巻17節

トリブヌス「(父上は叔父上(軍団指揮官)の仕事を見てローマ人の在り様と出世の術を学べと仰せだが、あんないい加減な男に学ぶことなどあるのだろうか。兵卒どころかモゴンティアクム(XXI軍団の駐屯地)の女どもにもヘラヘラと諂って軟弱な奴め……属州民や奴隷まで作戦会議に招き入れ、蛮族の首長と毎週酒宴を張って飲み明かしている。国防を任されているという自覚があるのか、信じ難い頽廃だ……百歩譲って酒席で醜態を晒すは人の性として軍団の情報を漏洩するのは国家への背信ではないか……父上は何故、叔父上に私を預けたのだろうか。クルスス・ホノルム(出世街道)など程遠いぞ)」
―一方その頃―
レガトゥス(軍団指揮官)「スカウルス(密偵の名)、宴で撒いた“餌”がどの”巣”へ運ばれるか確認しろ」
―数日後―
トリブヌス「叔父上、この名簿は? 地元の名士に貴顕、錚々たる顔ぶれ…」
レガトゥス「なかなかだろ。全員、裏切り者だ。私の撒いた“餌”で満腹の鼠共さ」
ト「直ちに捕縛すべきでは」
レ「いや……泳がせる。虚も実も広めてくれる忠実な使いだ。見つけたのだから何時でも刈り取れるしな」
ト「……」
――
トリブヌス:各軍団の指揮官の下、6名ほど配置された幕僚将校、元老院階級の子弟などが初期の軍事キャリアを積んでいたらしい。「部族」を意味するtribusが語源、英語のTribeの由来ですな。

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2023-03-09 12:00:00 +0000