←次のシリーズ illust/106957895
→前のシリーズ illust/105121960
完全に想定外だった。
その日、カムイは長い付き合いのお婆ちゃん(人間)に会うために片田舎の集落に来ていた。
そしていつもの鎖錠されていない引き戸に手を掛けようとしたとき、後ろから突然同い年くらいの少年型ヒューマノイドに襲撃される。
「ハニカム」の宿敵、「システム」。
少年型システム機の手に握られていたのは、小型の電磁パルス兵器(EMP)。
銃器もスタンガンも効かない彼女たちの数少ない弱点の一つだった。
全ての機能が停止し、関節にロックがかかるカムイ。
再起動にかかる時間は数十秒。
しかし少年型機は再起動直前のタイミングで何度も巧みにEMPを連撃して、彼女の復活を許さない。
そしてついには少年にまるごと回収され、敵のファクトリーで回収分解されてしまった。
カムイ、敗れる。
システムとハニカムには暗黙のルールがある。
それは「人間の目があるところで壊しあいをしないこと」。
普段都市部に潜んでいるカムイが白昼に襲われるリスクはほぼ皆無だっただけに、人通りがゼロの集落で待ち伏せされていたのは本当に想定外だった。レーダーに反応すらなかった。原因はわからない、ただ「機体・データ・希少素材を全て敵陣に持ち去られる」というもっとも不名誉な負け方をしたことだけは確かである。
ハニカムおよびシステム勢のすべての記録と記憶は秒単位でクラウドにログが取られている。
彼女がハニカムのネスト(工場)で再造され、襲撃直前までの記憶を持った状態でリスポーンしたのはおよそ二日後のこと。
疑似感情を持つ彼女は一週間ほど機嫌が悪かったようである。
なお彼女が会おうとしていた老婆が襲われた形跡はなく、そもそもいつものようにこの襲撃自体が人間に知られることも無かった。
そして事の顛末を把握したすべてのハニカム型ヒューマノイドの中でただ一体、体格の良い女子高生型機が本気でブチ切れながら動きだしたことを、少年型機はまだ知らない。
- To be Continued -
【補足】
・今回のイラストは物理的なメカバレの無いメカバレ絵をコンセプトに描いてみました。
・カムイを倒したのは過去作「アンドロイド詰め合わせ」のシステム勢少年型機です。
illust/101410434
・四枚目はカムイがやられた後の流れを「すっごくマイルドに」解説したtwitterのオマケイラストです。
・文中に「全ての機能が停止し、関節にロックがかかる」とありますが、これは相手に機体を持ち去られる際になるべく運びやすくならないようにするための対策で、システム型機にも同様の機構が採用されています。
2023-02-14 13:00:32 +0000