ヨナタンillust/101998566
ディオネッタillust/101987321
のエンディングです。
お借りしています
レンさんillust/104971256
ラパルトさんillust/101969445
本編終了後数年ほど経過した時点での
ゼラルディアを想像して描いていますが、
皆様の想定に不都合などありましたら、
パラレル・スルーとして扱っていただければ幸いです。
※
街の片隅、往来を陰から見守るように佇む墓碑は、
今日も綺麗に掃き清められていた。
「はい、いつものステーキ弁当、持ってきましたよ!
たまには違うものがいいって言うかもしれませんけどね。
今日のは特別です!
このてつねぶり、僕が仕留めたんですよ!!
責任を持って僕が捌いて、焼いて、お弁当にしたんです。
・・・だから、試食は絶対に
貴方にしてもらおうって決めてたんです」
芳しい蒼煙を燻らせる小瓶の隣、
いつもの定位置に置かれた空の弁当箱と入れ替える。
今年の聖夏祭も大盛況だった。
ブンブンアーマーGPは、今年から導入された
操演団体戦ルールがすごい迫力だった。
ブンブンファイターズチーム対夜影団チームの
激突は、後々まで語り草になることだろう。
装甲騎竜ダービーも、初期の荒唐無稽さは
すっかり形をひそめ、今や立派な競技として
多くのファンを獲得していた。
運搬業、農耕、土木以外の新たな騎竜種の生業として、
専属契約を結ぶ竜や、ダービー向けに開発された
装甲鞍を用意するものまで現れるほどの
盛り上がりを見せている。
あの夏、継承戦の決着を機にゼラルディアは生まれ変わった。
災厄の炎の中から、より逞しく蘇ったのだ。
・・・ディオネッタさん。
貴方たちが守ったこの国は、
今日も多くの人たちの笑顔で溢れています。
今のゼラルディアの繁栄の影に、貴方たちの
命を賭けた戦いがあったことは、決して忘れません。
今でも、目を閉じればありありと思い出せる。
・・・
王都を焼き尽くした大火がついに収まり、
長い夜がようやく明ける、その直前の出来事だった。
「・・・同僚が結婚するんだ。
ヨナタン、ウェディングケーキを注文していいか。
そうだな・・・イチゴとチョコレートのケーキがいい」
「もう・・・気が早いですよ!!」
倒れ伏したディオネッタの軽口に、
涙を零しながらもレンは精一杯の笑顔で応じる。
「悪いな・・・言うなら、今しかないと思ってな」
どうにか笑顔を作っても、張り付いた死相は誤魔化せない。
「・・・分かりました。その時が来たら、
精一杯のものをご用意させていただきます」
ヨナタンは真剣な表情で頷く。
「・・・レン。
私を止めるために、ここまで来てくれたんだよな。
生き急いでしまって、すまない。
だが・・・後悔はないんだ。
私は・・・こういうふうにしか、生きられなかった」
同じく竜の血を受け継ぐ少女が、
サキノハカの桎梏をも超えて、
今や立派に、本物の勇者に成長した。
そんな彼女に見送られて幕を下ろせるなら、
邪な企みのもとで始まったこの第二の生も
あながち捨てたものではなかったのだろう。
「・・・ありがとう。今なら、胸を張って言える」
友と呼べる人々に見守られ、ゆっくりと目を閉じる
ディオネッタの頬を朝日が照らす。
「───私が生きた意味は、確かにここにあった」
・・・
このところようやく頼もしくなってきた相棒だが、
この墓碑の前に立つといつも、あの時の泣き虫に戻ってしまう。
そろそろ、ケツを引っ叩いてやる頃合いか。
「ヨナタン、お前もそろそろいい年だぞ。
まだ嫁さんとまでは言わねぇが、
彼女の一人ぐらいは見つけたらどうだ?」
「ちょ・・・やめてよゼオン!?
僕は真剣に狩りの勉強をしてるんだから、そう言う話は・・・」
調理については有望な人材が育っているから、
僕が目指すのは材料調達の方。
ゼオンやラパルトさんに教えてもらって、
狩りの技を覚えているところだ。
配達先の冒険者の皆さんやザリア軍の軍人さんにも
色々と話を聞いて、どんな獲物が相手でも立ち向かえる
かっこいい狩人になるのが目下の夢だ。
「お前のガキどもの面倒を見るのが俺様の楽しみなんだ。
クソ真面目も悪かねぇが、よろしく頼むぜ?」
苦笑を返しつつも、渋々頷きを返す。
これからもこの国で続いていく自分の未来に想いを馳せて、
ヨナタンは墓標を後にする。
「それじゃ、午後の配達があるから、また。
・・・行ってきます!!」
見守っていてください、ディオネッタさん。
ゼラルディア中の人々を、僕達の料理で笑顔にしてみせます!!
2023-02-01 07:04:08 +0000