「秋成くん秋成くん♩…じゃーーん♩♩♩」
そう言いながらオレが居るリビングへ入ってくる此夏。
彼女は室内なのに、紅色の男物のジャケットを羽織っていた。
それは、クリスマスの夜に、彼女が着ていたジャケットだった。
かなりヘタってしまっていたので、その次の日、オレは補修を頼みに店に持って行き、
今日、補修が終わった。
と、店から連絡が来たので、取りに行き、
此夏に先程渡したのだった。
「お〜、似合ってる似合ってる…どうだ?ちゃんと補修してもらってたか?」
「はい!!…バッチリでした♩♩」
袖や肩の生地を見ながら、彼女は答える。
「私のジャケットさんが、帰ってきてくれました〜♡」
上機嫌でくるくると回る此夏。
「オイオイ…そんなに回ってると転ぶぞ?」
「大丈夫ですよ〜♡、〜♩」
そう言いながらひたすらに回り続ける此夏。
鼻歌まで歌って、今のコイツの機嫌は最高潮らしい。
…正直オレは、そのジャケットには余りいい思い出がない。
それは、インヴェーダーズとの一悶着の時に、ボロボロになったバンシーに羽織らせたものだったからだ…。
どうしてもそのジャケットを見てしまうと、あの時の彼女の姿が脳裏によぎってしまうのだ。
「わひゃぅっ!!!!」
「あぶねっ!!!!!!」
案の定目が回って倒れそうになる此夏を抱きとめる。
「このじゃじゃうま女!!言わんこっちゃねェ!!!!…大丈夫か?足とかグネってねぇか?」
「だ、大丈夫です♩…え、えへへ…すいません…調子乗りすぎちゃいました」
バツが悪そうに頬をポリポリとかきながら言う此夏。
「たかが上着が帰ってきただけだろ?はしゃいでんじゃねェよ…ったく…」
「……たかが上着なんかじゃないもん」
そう言いながら、オレの胸をポカポカと叩く此夏。
声が少しだけ、沈んだ声色になっている。
「…これは……ヒーローが初めて私にくれた…優しさ…なんだもん…」
……なるほど…此夏は…そう受け取っていたのか…。
自分の浅はかな言葉を反省する。
「…悪ぃ……そんな風に思ってくれてるってわかってなかった…ごめんな?此夏」
そう言いながら彼女の頭を撫でる。
「んっ♡……えへへ♩」
気持ちよさそうに目を細める此夏。
どうやら、許してくれた様だ。
その証拠に、嬉しそうにオレの手に頭を擦り寄せてくる。
「でもよ…1つ1つそうやって残してたら、いつか置き場所が部屋の中じゃ足りなくなっちまうぞ?」
まだまだコイツにはやってやりてぇ事が山ほどあるんだ。
その度に、何か残されたら、絶対にこの家では場所が足りなくなる。
「その時は…もっと広いお家に引っ越しちゃいましょう♩」
笑いながら彼女は言う。
「ヘヘッ…簡単に言うなよな?…んじゃぁ…もっといっぱい試合もバイトも、頑張らねぇとだな!!」
そう言いながら、そっと彼女を床に座らせる。
そして、立ち上がろうとしたオレの服を、此夏がキュッと摘む。
「ン?どした此夏…?」
彼女の頬は朱に染まっていた。
「その時には……2人じゃなくって…あぅ……その…もう少し…おうちに住む人数が増えて、私の苗字も秋成くんと…一緒になって…いて欲しい…かも…です……」
あぁ…これはスイッチ入れちまったかな…。
「んじゃぁ…それも目標に込みで、今から色々頑張っちまうか?」
「……うん♡」
家庭…か……あんまりまだイメージ湧かねぇな……。
そう思いながら、此夏をお姫様抱っこをして、寝室へと向かうのであった。
【終わり】
どちらも駄文ですが、もし見て頂けたら嬉しいです。
なお、内容は健全だとは思いますが、R-18となっております。
申し訳ございません。
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2023-01-13 23:38:27 +0000