『ゼンマイ仕掛けのワンダーランド』でろくろを回すシリーズ5回目。
絵のほうは絵コンテ的なファンアート(?)です。
実際には長回しの天井+SEのみだと思いますが…!
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『螺旋をひた走る』(illust/103787547)
今あらためて読むと、巨大構造物と化したメカ兄さんを助けに暗闇に飛び込むアリスは、作者が与えたあの日のやり直しなのかもしれない。ここから先のアリスは台詞も行動も頼もしくて好きなんですよね。常に前に進むための選択を取り続ける姿にウウッてなる。
ハートの女王のバトルスタイルが殺意高くてまじビビる。この物語、主人公は何の力も持たない人間なのに、向かってくる試練がどれもこれも本気でアリスたちを摘み取るつもりなのがいいなと思います。無傷なままでは進ませてくれない。作家性を感じるぞ…!
最終章入ってからの流れがアリスに「進め!」と言ってくれているようで本当に嬉しいんですよ。これまでが停滞と迷い道だったので。アリスの台詞が「行かなきゃいけないの」ではなく「進まなきゃいけないの」という言葉選びなのも、きっと作者のそういう意図が込められているんじゃないかなと。それに応えるリリーが「ここは私どもに任せてアリス様は先へ!」なのがウオオオ燃えてきたーーー!!!って感じでもうカタルシス。観客席からエールを飛ばす気分でした。
チェシャ猫もといイケメンクソ野郎が傍についてるので油断はならなかったんですけど、でもワンチャン、もしかしたら未来を勝ち取れるかもしれない、ひょっとしたら本当に希望を抱いて良いのかもしれない、と思えたのはこのシリーズでこの話が初だったので、ギアが3速に入った感ありますね。やっとここまで来た…!長かった!
タイトルも『螺旋をひた走る』なのが、ぐるぐると同じところを走っているようでいて少しずつ前進している感じがして良い。ちょうどこの頃から日常で聴いている曲を切り替えたので、自分にとっても分岐点のような回でした。(兄さん死亡回からこっちずっとNieRのエミールとAshes of dreamsで回してた)
『ワンダーランドの終焉』(illust/103841016)
タイトルで覚悟したよなあ!? 最終章は何が起こっても不思議じゃないのは参加者全員に言えることだからな!
兄さんのバグりきったテキストですが、読み取れる部分はデイジー・ベルの歌詞なんですね。機械に歌わせるならまずコレっていうアレ。しかも今の状態を一番よく表した箇所で。メカ兄さんの自我が崩壊してしまった原因は、劇中でハッキリとは(最新投稿に至ってすら)語られていませんが、メカ兄さん起動回のタイトル、引用された歌詞の内容、このあとのアリスの定義からして、まぁもう間違いなく〝愛〟なんですよ。そんな彼が口ずさむのに相応しい歌。シュミが良いぞ作者。
初めて見るナマの背中が直球デザインで可愛らしさにふふっとなると同時に、キャラシ投稿の時点でグラスチェーンに見せかけた回路が眼鏡ではなくバックパックに接続されていることにノーヒントで気づけた読者どれだけおるねん完全に騙されたわーって感じです(自分は見直せと言われてようやくだった)。
そしてここで再び出てくる「スペシャルな道具」のフレーズ。ニクイ。兄さん死亡回では存在しなかった「兄さんを助けられる道具」が今ここに存在する。やっぱりあの日のやり直しなんだ。ネタの調理がすこぶるウマい。
「ひとつだけ、」を皮切りに助走をつけて答えを出すまでのたった数コマが、長い走馬灯のようでした。夢の終わりは寂しいなぁ。喉を掻き切るアリスチャンの表情も良かったです。唇がわなないていて。読者はコレが恐らく正答フラグだと思って読んでますが、アリスは死ぬ気ですからね。いやー長かった。ここまで書いてようやく最新話の感想が言える。
『螺子を回し歯車は回り針は動き出す』(illust/103911370)
「エコー・クロックテリングは死んだ」
「あなたはエコー・クロックテリングではない」
こ、
殺す気かーーー!!!!!
ゼンマイ仕掛けのワンダーランドを読んできて初めて「ひどいよお!」って叫んじゃった。メカバレリョナ回も兄さんが死んだ回もこんなことは口に出さなかったのに。本当のことでも本人を前にして言っていいことと悪いことがあるぞ! 真理に胡座をかくんじゃない! それは大抵の場合において相手を傷つける! いや、まじ、本当にページを進めるのが怖かった。ショックを受けたメカ兄さんがそのまま壊れてしまうんじゃないかと思った。だって最初に望んだのはアリスでしょう?
畳み掛けるように「私はあなた自身のことをほとんど知っていないと思う」が来たときは心底覚悟した。一章からリアルタイムで追いかけてきた好きなキャラが今ここで死ぬ。マジでそういう覚悟をした。
美しい答えでした。
「世界でたった一機だけの」
「私の愛する機械」
非の打ち所がない答えでした。
メカ兄さんがバグった切っ掛けは、アリスが「私」を通して居ないはずのエコーを見ていることを「酷く妬ましい」と思う感情が生まれたからなので(作者のブコメで伏せ字が判明)メカ兄さんが真に欲するのは〝「私」だけに向けられたアリスの「愛」〟なんですよね。それを、完膚なきまでに、一切の疑問や不安を残さずに、彼に与えたことになる。美しい。
真理というのは永遠不変で(哲学用語では普遍が正しいけどこの場合は不変のほうがニュアンスとして相応しい)それが一つ存在すれば一つの問いを消滅させるだけの力を持つものであり、少なくとも「アリスの中の真理」によって「私」は唯一無二の愛を獲得し、もう惑うことはないのです。名前とか何者とか二の次だ。エコーの代わりとしてではない、自分だけに向けられたアリスの愛が欲しかったのだから。そしてそれはアリスが天寿をまっとうしたあとも変わらず残る。永遠に。何故なら真理だから。美しかろう。誰かに自慢したいくらいだよ。作者のこの鮮やかな手腕をよ。
もうね、ここまででも充分なんだ。アリスは夢から覚めた。レプリカの兄さんも救われた。ここから先は、神様のご褒美なんです。
にににに、兄さーーーーーん!!!! 正真正銘のエコー・クロックテリング!! こんな僥倖があって良いのか!! ソッコーではよ帰れや言われてるのマジウケる。
パッパの台詞一つ一つが、本当にそう、そうだよ、その通りだよ、ほんとだよ、どれだけ、どれだけ…と相槌を打ってるうちに自分まで泣いてしまった。二度三度読み返しては同じ場面で涙してしまった。今作で一番感情移入したのがパッパだった。家族のなかで一人で苦しんだパッパが救われて、良かったなあと心の底から思います。ありがとうありがとう。ありがとう。
ファンボによるとアフターにもう一本?後日談があるっぽいので、それを読んでからこのクソ長ったらしい感想を〆ようかと思います。怪文書に付き合わせて申し訳ない。あともう少しで終わりますんで。
読みたい漫画があるって幸せだなあ。
2023-01-02 19:37:20 +0000