二倍の敵に倍の損害を与えて撃破する系男子、不敗のダヴー。
ルイ=ニコラ・ダヴーは1806年10月14日のアウエルシュタットにおいて26,000の兵を以て本来単独で引き受ける筈ではなかった63,000のプロイセン軍主力と対峙してこれを打ち破り、ダヴーの副官から戦果を聞いたナポレオンは当初「元帥は物が二重に見えるんだ(実際近眼ではあった)」と揶揄したという、俄かに信じる事が出来ないほどの才能を発揮しました。
長谷川氏の激熱ナポレオン漫画、ポレオン覇道進撃の7巻では圧倒的戦力差を前に狼狽える部下へ
「敵が半分だろうが2倍だろうがいつも通りだ。やるべき事をやれ」
「貴様は負けるために戦っているのか」
と叱咤激励しており、本当にこの通り言ったのかは知りませんが、これは単純に根性や精神論だけで命じている訳ではなく(それが必要な局面ではあるけれど)、その前提としてフランス軍の練度や先進性、戦術の優越性、そしてそれを率いる自身の指揮能力からそれなりに勝算がある、自信と信頼があったから正面にいるのが倍する敵主力軍であると知った後も踏み止まっていたばかりか前進してこれを撃破するに至ったのでしょう。
普段から自身にも周りにも厳しく、華麗さとは無縁のユーモアに欠けた人物だったらしく、日々激しい訓練を部下に施していたためにその苛烈さから兵は敬意を抱くと共に元帥を恐れていたという話ですから、戦力差があっても勝ち目があるという考えにも相応の根拠を抱いていたと思われます。
戦場に出ては堅実に勝利し、総督として占領地を任されれば管理者として力を発揮し、ナポレオンが失脚して返り咲いた際も素早く支持を示して軍を再編する……極めて優秀な将軍であるのは間違いないですね。
傍にいる人からは気を抜けない恐ろしい人物だったでしょうけど。
2022-12-27 16:15:42 +0000