ヴィヴィアスはすでに疲弊していた。
何しろ本題の依頼に入るまでにずいぶん時間を要したのだ。
時を遡ること数週間前、常葉蔦に貴族の召使を名乗る人物が訪れ、
一通の手紙を手渡されたことが始まりだった。
手紙の主は精霊の地エリリオンに領地を持つ伯爵家の貴族だという。
依頼主は多忙であるため、直接会いに来て欲しいとのことだったが
今思えばこれに応じたことが誤りであった。
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■非公式イベント:常葉蔦の依頼【illust/102822826】に参加します!
そしてイメレス100件達成おめでとうございます!伝説だー!!
きっと国外のご婦人方からも依頼が来ていることでしょう(未来予知)
時系列はお店がガイドブックに掲載されるようになって、
国内での知名度が高調に達したころ…を想定しています。
あるいは最終章後、王都の復興が進んで少し落ち着いてきたころのイメージです。
のんびりとした種族ですので、納品期限は特に定めていません。
今回は自分用の依頼になりますので、優先順位は低めに回していただいて大丈夫です!
納品方法についても特に指定はありません。
連絡をいただければ、お店まで自分で受け取りに行くことも可能です。
■依頼品要約:『自分をより美しく見せる櫛』
■お借りしました(敬称略):常葉蔦のヴィヴィアス【illust/102326650】
貴族は家に商人を呼びつけて取引をする…という偏見の元、
実家にお越しいただきました。すみません、こちら慰謝料の100ギランです(閲覧ポチ)
■実はヴィヴィアスさんと同じアラディア院OB:ナルキス【illust/102168114】
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エリリオンはゼラルディアの西側に位置するが、
バラリア地方とは巨大な山脈とバルカル湖によって隔てられているため
移動手段はこの山脈を越えていく陸路か、湖を経由した遠回りのルートしか存在せず
移動するだけでもかなりの時間を要した。
長旅を経て、手紙に同封されていた地図に示された城へ向かったが
ここでもかなりの時間を食いつぶされる羽目になった。
城を警備する門番に手紙の封蝋に記されたオェングスの家紋を見せ、
正当に招待された客人であることを示すと
「確認する」とだけ言い残して奥に行ったきり帰ってこなくなってしまったのだ。
この辺りの精霊種は高慢な性格の者が多いと聞いていたが、これほどまでに無礼なのか?
このままでは足が棒になる、もしや存在を忘れられていまいかと疑い始めたころ
ようやく門を潜ることを許可された。
……が、そこからさらに長時間待たされることになる。
ここで待つようにと通された部屋には、
いたるところに鏡や肖像画――年代は違えど全て同じ人物が描かれているようだ――が飾られていた。
この頃になるとヴィヴィアスの忍耐も限界に近づいていた。
椅子に腰を掛けられたのはよかったが、使用人と思しきノームや妖精たちが通りかかるたびに
物珍しそうに自分をじろじろと眺めてくるので、まるで晒し者になったような気分にさせられるのである。
これが疲れ切った心身にじわじわと追い打ちをかけていたのだ。
どうにも居心地が悪く落ち着かない。正直疲れたし早く帰りたい…。
そう思っていた時、肖像画と同じ顔をした手紙の主――気のせいか妙に光っている――が
悠々とした足取りで姿を現した。
「やあ、待たせてすまないね、遠くからご苦労だった。
…ああ、これはサービスの紅茶だ。君の為に用意したのだ、口に合うといいのだが。
ところで今日は船で来たのかね?それとも馬車で?
…なるほど、山脈を超えてくるのは大変だったろう。
見渡す限りの山、山、山!実に退屈な風景だ。しかしこういった自然を残しておくことが
大地の恩恵を大いに享受する我が領民にとっては非常に重要なのだ。
華やかで活気のある王都の景色のほうが、私は好きだがね。
王都と言えばそろそろ歌劇のシーズンだな、今度上演される歌劇のチケットの競争率が……」
ちょっと待て。この男は依頼の為に自分を呼び寄せたのではなかったのか?
貴族の無駄話を聞くためにわざわざこんな思いをしてまでエリリオンに足を運んだわけじゃない。
ヴィヴィアスは疲れからくる苛立ちを押さえつつ、話を遮るようにして声をあげた。
「失礼、申し訳ないのだがこちらもあまり時間がないのでね。
できるだけ手短に話していただきたいのだが…」
「ああ!私としたことが。重要なことを忘れていたな」
「…ミルクと砂糖は要るかね?」
■企画元:pixivファンタジアSOZ【illust/101965643】
2022-12-25 14:34:02 +0000