『お楽しみのところ悪いが、至急拠点に戻ってきてくれねぇか?』
ディオチテ国境警備隊の拠点も家族である義兄のロッジテルからの連絡がお祭りの最中のメスズに届いた。
久々の義兄からのコンタクト。このタイミングで何だ?と怪訝そうに隊長に一声かけた後、後ろ髪をひかれる思いをしながら戻る。
戻って久々に再会したロッジテルに色々話をふられ、ちょっと面倒だなっと本題を聞こうとした矢先の事だった
拠点に残って見回っている隊員の叫び声
「王都から火と黒煙が出てるぞ!?」
そこから王都が襲撃されていると報告が入るのに、時間はあまりかからなかった。
遠くにある小さく見える王都からあふれ出る黒煙と炎の赤
それを見つめながらメスズは脳内で葛藤する
(どうしよう。ここから王都まで、走る?どれぐらいの時間と体力が?さすがにあたしでも無理。でも、でもあそこには、皆が―――)
持ち前の足を使っての移動はさすがに限界がある。
ましては今回は特に、緊急性が高すぎる――――――
メスズはギュっと胸にかざしているお守りを握った後、その場から引き返し…ある場所に向かった。
ーーーーー
「メスズ!」
ロッジテルが追いかけきた先にはディオチテ砲の乗り口に両手を置き、プルプルと震えている義妹の姿
入ろうとして両手を置いたが足が上がらないその姿は、とある世界の事を借りるなら”生まれたての小鹿”のようだ
「――――メス「止めるなっす!!」……」
なんとなく義妹の雰囲気に何か感じたのか声を呆れたように声をかけたがそれを塞ぐように切羽詰まった声で言うメスズ
「―――いま、ここで…いかないとっ!…み、みんな…が…!だか、ら!あたし、あたしは…!行くんすよ!」
何も言うなという意味も込めて言うが、今のメスズは真っ青になり、体や声の震えが止まっていない。
後は足を上げてそのまま大砲に身を沈めて誰かにボタンを押してもらったら飛べる。飛べるのだ。
なのに彼女の体と脳は無意識に、落ちた記憶を呼び起こす
あの絶望と落下の感覚が―――。
ドスッ
「あいてっ!!」
そんな感覚から現実に戻されたのは背中に広がる瞬間的な痛み
見かねたロッジテルがため息をついてメスズの背中を思いっきり叩いたのだ。
メスズは即座に後ろを振り返ると、そこには呆れたように見つめる義兄の姿。
「何するんす…‥ちょ!?あ、兄貴!?!?」
いきなり叩かれてなんなんだと怒ろうとしたら首根っこを急に掴まれ持ち上げられる。
そしてそのままディオチテ砲の中へと放り込まれた。
外の方で義兄と隊員たちが何か話をしている
頭だけだそうとしたら再び義兄の右手に阻まれる
「お前―――別に”死にに行く訳じゃねぇーだろ?”」
「っ!!」
一言、右手を戻しそういうロッジテルの言葉にメスズはピタリと固まる。
そうだ――ーあたしは、あの時とは違う
「…あ、当たり前じゃないっすか!…あたしはっ」
少し昔の光景に戻されるのを振り切り、もう一度ロッジテルを見やろうと前を見たら―――そこにいたはずの義兄がいない。
「なら、頑張れ」
そう一言聞こえたと思った矢先に、メスズの体は大砲から離れていた
「ああああああああああああああ!?!?!?!?」
突然の青、急激にくる浮く感覚、変わりゆく景色
そう、彼女は―――飛んだ
彼女の意志を置き去りに唐突に。
「…はぁ、本当に世話がやける義妹だな。」
そうため息つきながら、王都へとかッとんでいった義妹を見送るとポケットから通信機を出す。
「……あ。もしもし、母さん?やっぱり、説得無理だったわ。…あと、あいつ飛んだよ、今。多分もうすぐそっちの上空みえるんじゃねぇーか?…あぁーそれそれ。」
そうしてディオチテ国境警備隊の高所恐怖症である彼女は―――空を飛び、王都へと突っ込んだ。
ーーーーー
■pixivファンタジア Scepter of Zeraldia【illust/101965643】
■最終章『ゼラルディアの王笏』【illust/103584939】
■最終章にメスズログインします!
と、いうわけで!!!!宣言通り!!!ディオチテ砲で飛びました!!ありがとうございます!!
■こちら【illust/102100111】の表紙にいらっしゃるモブさんお借りしてます。
あとメスズちゃんの義兄であるロッジテルさんがでしゃばっている
■着地後の諸々はこちら【illust/103609926】のID判定参照しようかなーっと!
■着地後→【illust/103879576】
■メスズ【illust/102961950】
■何か問題・質問等ございましたらご連絡ください。
■キャプション随時更新
2022-12-24 14:58:59 +0000