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「裏で悪どい事ばかりしてる」そんな噂が立つ自分の家が嫌だった。
「お前は一族の為に商売を学べ」そんな事ばかり言ってくる家の人達が嫌だった。
だからぼくは本の中に憧れた。
ピンチに駆け付ける輝く騎士の英雄譚
異世界から来た聡明な魔法使いの冒険譚
ぼくもああいう風になりたかった。
だから家を飛び出してアラディア院の扉を叩いた。
ぼくの冒険をする為に。
アラディア院に入り友達ができた。
かっこいい部長に本当のお姫様みたいな姫様、とっても強いハスくんに魔法が得意なアスターくん、クールなコズマくん。
みんないい人達でとっても楽しかった。
◆◆◆
燃え盛る王都、溢れる怪物達。
ぼくは少しだけ高揚していた。
まるで本で読んだ展開だ。
色んな場所で、色んな人達が戦っている。
集まったのは英雄英傑達。
避難する友人達と逸れてしまったぼくは、その光景を興奮しながら眺めていた。
ぼくもなりたい。
彼等のようになりたい。
ふと、叫び声が聞こえた。
部長と姫様の姿。
モンスターに捕まり、攫われていく姿。
助けなきゃ、そうすればぼくも彼等みたいになれる。
駆け出そうとした時、誰かがぼくに声を掛けた。
「さすがやねぇ。こーんな時も自分の為にやなんて。」
焦げ付いた空気の中に漂う杏の香り、そして僅かに混ざる獣の匂い。
黒い髪を靡かせたソレは炎の中に佇んでいた。
「あなたは⋯」
初めて見る筈だが知っている。
家に飾られている古い肖像画。
そこに描かれていた御先祖様。
心臓が大きく脈打つ。
何かが、ぼくの中で目覚めた。
「御先祖様!」
無意識の内に理解した。
尻尾を振りながら、ぼくは彼女のその手を取る。
「すごい!すごい!ねぇ!これも御先祖様のおかげなの!?御先祖様がぼくをあの本の人達みたいにしてくれるの!?」
優しく微笑む御先祖様は興奮するぼくの手を優しく握りこう言った。
「ちがうんよ?ウチはダケンちゃんにちょっとだけ手を貸しに来ただけ。」
握られた手が熱い。
「ダケンちゃん、英雄になる為の力は最初からキミの中にあったんよ?」
血の流れは早まり、心臓の鼓動は強く鳴り響く。
“英雄になる為に力は最初からあった”
その言葉が、ぼくの中の扉を開いた。
◆◆◆
世界が輝いている。
眼前に立ちはだかる悪い敵を斬り伏せ、僕は部長を探し街を進む。
御先祖様がくれた英雄の装いを身につけて、手には聖なる武器を握りしめる。
とても幸せで、そして満ち溢れた気持ち。
僕は英雄なんだ。
◆◆◆
「いた!部長、だいじょーぶ?」
ルーズナイゼに迫る怪物を斬り伏せた血塗れの人物。
飛び散る血飛沫に怯える彼とは裏腹に、その顔はいつもと何も変わらない笑顔。
「僕が助けに来たよ!」
笑顔のダケンはルーズナイゼに手を差し出した。
【斬ったのは五分刈りゴブリンとは別のモンスター(?)だったみたいです】
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2022-12-22 13:12:28 +0000