まったく!
お前というやつは!
どうしてそう無茶ばかりする!!
アレゥスの刀が花獣の皮膚を切り裂く。
この獣には魔法は効果がない、そのかわり直接の攻撃がよく効くのだ。
建国時の争いから伝わる古き災厄への“いくさ”の仕掛け方を、
アレゥスは、シルシウムは熟知している。
「武戦団!まだまだ足りぬぞ!
我らの武力をもって示すがよい!
古き災厄なぞ恐るるに足らず!
皆の者、鬨の声を上げよ!
死の静寂を乗り越えるべし!」
オオオオオオオ!!
武戦団が花獣を取り囲み、手にした武器で討ち倒さんと挑む、
アレゥスは咄嗟に抱き止めて庇ったル・レーブを……睨みつけた!
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◆戦結びの悲願【illust/103685444】/貴族の務め【novel/18931194】に繋がる話となります。
◆ル・レーブ:illust/102235711
◆月咲ノ花獣 討伐戦:illust/103662780
◆ノブレス・オブリージュ:illust/103592212
◇アレゥス・シルシウム:illust/102186187
◇シルシウム武戦団:illust/102852287
キャプションカラテをくらえ
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「……アッくん……!?」
突然の救援者にル・レーブが驚きの声を上げる。
アレゥスはいつもの馴れ馴れしい呼びかけを気にすることなく言葉を放った。
「おいルレ公!!まったく!お前というやつは!
どうしてそう無茶ばかりする!!」
公爵家の当主に対して何という無礼な振る舞いだろうか!
貴族の文化に詳しい方がいればあまりの不行儀な言動に肝をつぶすところだろう。
シルシウム家は古くは辺境伯であり、今の爵位では侯爵にあたる。
これでは序列で上位にあたるル・レーブ公爵に対してあまりの物言いである。
しかしアレゥスは幼馴染であり、身近な場では互いに気安く呼び合っている。
だが思い返して欲しい、ここはエバート邸であり周りの目もある大広間である。
それなのに彼の怒りは収まらない。
「お前は昔から……自分だけ遠くを見るような目で見て……!
自分は犠牲になっていいとでも言うのか!精霊だろうと何だろうと、俺には同じだ。
お前は俺が幼い頃からの付き合いなんだぞ、ずっとだ、ル・レーブ!
俺にはお前が必…….」
ふと、冷静になる。
避難所であるエバート家の護衛に向かう、と武戦団を引き連れてやって来たアレゥスは
ル・レーブの言動に不穏を感じ、初めから嫌な予感がしていた。
コイツはほっとくと勝手に1人で遠い遠いどこかに行ってしまう、そういうやつだ。
だから、ほうっておかない。
身近な者がいなくなることへの寂しさは、人が持つ感傷だ。
感傷に過ぎないから、そんな弱みは見せてやらない。特にコイツには。
そんな強がりを持っていたのに、どうしてこんなにまくし立てているのだろう。
どよめきが聞こえる。
突然の事態に周りから困惑の目が向けられている。
まずい。
スッと姿勢を正し、服の埃を払ってル・レーブと向き合い直して言う。
「お怪我はありませんか?ル・レーブ殿。
間に合ってよかった、我らシルシウムがこの場をお護りいたそう」
取り繕うの遅くね?
武戦団たちもそう思います。
キメ顔のアレゥスの胆力を、改めて感心したとかしないとか。
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エバート家の警護に行くって言ってたからね!→ illust/103685444
ここで不穏を感じて→ illust/103589792おめーまた無茶すんだろさせねーよって顔してたので
ルレくんの救援にやって来ました。
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2022-12-21 17:31:26 +0000