ユニちゃんillust/102461381
ネギさんillust/102063852
ジュリさんillust/101966011
の調理を手伝う
ヨナタンillust/101998566
炊き出しのメニュー
おかず味噌汁illust/103628252
おにぎりどうぞillust/103656159
そこに襲いくる
黒の魔法生物illust/103587589
立ち向かう
ファシャルさんillust/102583616
ブラックレッドさん
タチエさんillust/102035043
※
「おにぎりできたよ!
モダマそぼろとカイガラウオがあるから、
一つづつお皿に並べて!!」
「お待たせ!取って置きの葱を店の在庫から引っ張ってきたよ!
さぁ、新鮮なうちに刻んでくれ!!」
「悪ぃ!ニャニャイモが怯えて逃げちまった!!
捕まえてくれるか!?」
「はいっ!任せてください!!」
ユニから、ネギから、ジュリから、
次々に飛んでくる指示をゼオンとヨナタンが手分けして次々にこなす。
パーチェがかき混ぜる大鍋の中には、すでに多くの野菜が投入され、
具材が溢れそうなほどに詰め込まれた
おかず味噌汁が芳しい湯気を立てている。
手間取れば、後から入れる具材が生煮えになってしまう。
一瞬も気が抜けない。
無償の炊き出しのための料理といえど・・・いや、だからこそ。
仕上がりに妥協は許されない。
大切な住処を焼け出される心細さは、ヨナタンにもよくわかる。
そんな時に食べたあのパイの味が、僕をここまで連れてきたのだ。
辛い時こそ、本当に美味しいものを食べてもらいたい。
それで、救われる人だってきっといる。
それを信じて、フィアンマさんが呼びかけた
炊き出しにはいくつものお店が協力してくれている。
ゼラルディアには、美味しい食べ物を出してくれる
素敵なお店がこんなにも沢山ある。
みんなが、僕と同じ想いで、傷ついた人たちを元気づけるために
自分にできることに誇りを持って取り組んでくれている。
今こそ、この国の力が試される時なのだ。
最前線で戦う戦士たちだけではない。
今日に至るまでそれぞれが磨いてきた技を駆使して、
誰もが、この状況に立ち向かっている。
凄惨な災いの只中にあって、
むしろ心が昂っている自分がいることを、
ヨナタンは自覚していた。
・・・負けてたまるか。
僕たちが今日まで積み重ねてきた営みを、
こんな理不尽に奪われてなるものか。
無辜の市民の一人にすぎない僕たちにも、
意地があるってところを見せてやるんだ。
かつてない集中力で調理に没頭するヨナタンの耳に、
騒がしい叫び声が飛び込んでくる。
「逃げろ!魔物たちがここを嗅ぎつけた!!
我々だけでは抑えられない!!
持ち物を全て捨てて逃げるんだ!!」
警護に当たってくれていたザリア軍の兵士が
炊き出しに集まった人々へ向かって声を張り上げる、
その背後に、巨大な腕を備えた単眼の魔物が
何体も迫っている。
市民の退路を確保しようと自ら盾になる兵士たち。
漆黒の巨体が、無慈悲に、無造作に巨大な腕を振りかぶる。
「妖夷掌ォ!!」
気合一閃、ヨナタンが解き放ったゼオンの剛拳が、
最前列の魔法生物をまとめて吹き飛ばす。
体制が崩れた魔物へ兵士たちが殺到し、各々の得物を
弱点である巨大な一つ目に突き立て、とどめを刺していく。
「ここは通さないぞ・・・みんなのご飯がかかってるんだ!!」
この場で戦える者は決して多くはない。
僕がやるしかないんだ。
腹を括って、仲間の骸を踏みしだいて攻め寄せる
魔法生物たちを負けじと睨み返す。
最前線で戦う人々の過酷さは、こんなものではないだろう。
彼らが必死で食い止めた、その手からこぼれ落ちた雫でさえも
これほどの勢いなのだ。
僕がお弁当を届けた人達も・・・
きっとこの先のどこかで、必死で戦っている。
そんなヨナタンの不安を蹴散らすような豪放な声。
「オイオイ!一人でカッコつけてんじゃねぇよ」
戦場に飛び込んだブラックレッドが、握り固めた
巨大な両腕を叩きつけ、魔物の頭をブチ砕く。
「どうやらオレの出番らしいなぁ?
遠慮なく暴れさせてもらうぜ」
ニェウダーチャの裏人格、ファシャルが表出して、
あどけない顔立ちに獰猛な笑みを浮かべる。
掲げた掌の上に生じた巨大な魔力塊を無造作に投げ込めば、
複数の魔法生物が巻き込まれて微塵に吹き飛ぶ。
「戦えるメンバーはあなただけじゃないわよ、ヨナタン。
・・・この程度の相手なら、
わたしたちだけでも余裕なんですけど?」
タチエには、ヨナタンの心中がすっかりお見通しらしい。
日々の仕事を通じて、気心の知れた仲間同士。
余分な言葉はいらない。
ヨナタンは、怯むことなく厨房に立ち続ける
フィアンマに向けて声を張り上げる。
「フィアンマさん!・・・僕、行ってきます!!
前線で戦ってる人たちにも・・・
みなさんが作ってくれたご飯を届けます!!」
2022-12-17 04:24:19 +0000