【PFSOZ】あばれ馬

いそみね
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お祭りだからはっちゃけると思ったが突然のシリアスです一応ご注意を。

お借りしました

ツバサさん(3章・聖夏祭のすがた)
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クリムさん
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ロベルトさん
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この投稿によりキャラの行動をしばるものではございません。
黒い翼を得たツバサくんを見てラクリムはどう反応するだろう?と考えた結果です。
第三者から見た率直な感情というか。ピュア過ぎて心配で仕方ないツバサくん…

正直これはツバサ君自身やゴルトラールさんの役割なのではとも思うし、
座面メンテでしかお付き合いのない間柄で差し出がましかったらすいません。
ラクリム自身は人間族なのでこの問題を解決できる力が無く、
お説教する程度の事しかできないという苛立ちもあるかもしれません。

最終的な結末(あるいは解決方法)はラクリムの出る所ではないと思うので
ゴルトラールさんやツバサさんたちにお任せします。

企画元
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ラクリム
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修理工房リペアラック(修理のご依頼および従業員募集中!)
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※自キャラの個人的な動向はタグ「ラクリムの腕」にて投稿しています。
※「修理工房リペアラック」参加作品はタグ【リペアラック】にお願いいたします。

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フリークスダービー【蹄王賞】を直前に控え、
いつも出走前に顔を見せていたツバサが今回やってこなかったのを不思議に思っていたラクリムだったが、
聖夏祭で賑わう街で偶然再会したツバサの姿を見てすぐにそのわけを理解した。
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ラクリムはいつになく不満げだ。

  「見てください!ツバサが生えたんです!」

黒く尖った大きな翼を自慢げに見せてくるツバサの無邪気な明るい声に
ラクリムは無言で答えた。いつもと違う様子に思わず苦笑いし首を傾げるツバサ。

  「なんか勝手に生えてきて おれもびっくりしたんですけど、」

チクッ チクッ

はじめてこんなにたくさん うそをついた

  「これで練習すれば飛べるように」

ツバサがそこまで言いかけた所で作業台に腰かけていたラクリムがのそりと立ち上がり、
ツバサの背に生えているもうひとつの翼――元から生えていた蒼色の羽根を掴んだ。

「何言ってんだ。お前のツバサはこっちだろ。」

ラクリムの明らかに不機嫌そうな目つきにツバサは思わずひるんでわたわたと手ぶりを交えて続けた。
  「で、でも、飛びたかったんです!これがあれば飛べ…」

そう言いかけたツバサをラクリムは突き返した。
「そもそもお前は、何で飛びたかったんだ?飛べれば良かったのか?!」

  「……?!」

ツバサは返す言葉を思いつかず黙り込んだ。ラクリムが捲し立てるように続けた。

「ぶっちゃけお前に生えた翼の色はどうでもいい。けどな、俺は今お前に失望してるんだ。
 それがお前の本当に望むものなのだとしたら俺には手に負えねえ。あいにく修理の対象外だ。」

  「そんな…ひどい事…」

「俺はひどい事を言っているつもりはねえぞ」

  「おれはただ…飛びたくて…」

そう言いながら震える唇を噛み締め後退りし、
工房から飛び出そうとしたツバサを背後から飛びかかったラクリムが取り押さえた。
リペアラックの従業員たちもただならぬ雰囲気に圧倒されながら見守っている。

ラクリムは自分よりもずっと大きいツバサを体全体で抑え込むと顔を両手で挟み込み、
思わず目を逸らそうとするツバサの、前髪からのぞく彼の無垢なままの目を、じっと見つめて言った。

「いいかツバサ、気をしっかり持て。お前にはできるはずだ。
 俺に思ってもいないことを言われて悲しいか?だとしてもそれに飲み込まれるな!」

ツバサの目に涙がたまった。

「お前は、お前だろ?飛びたかったのはお前だろ?お前自身の力で飛びたかったんだろ?」

  「おれ…自身で…」

「くくく…」
何故か笑い出したラクリムにツバサが困惑していると、ラクリムはすまねえと断って続けた。

「いやよ、なんで俺なんかが人に説教してんだって可笑しくなっちまってさ…
 手に負えねえ暴れ馬演じても、ひとりじゃ何もできねえ貴族の坊ちゃんだって。
 兄貴にも、おふくろにも、周りの大人たちにも、何度同じことを言われたか気が知れねえ。
 飛びたいってもがいてるお前見てると、なんか言いたくなっちまってよ…すまねえ…」

ラクリムはツバサを抑えつけていた力を抜いて、ツバサに手を差し伸べた。
「乱暴な事してすまなかった。ほら、立てよ。お前の脚で。」

ツバサを囲んでラクリムたち関係者が話し合いをした。
事情を聞いたラクリムが腕を組みながら頷いた。
だがツバサはなお、鏡の事をラクリムには打ち明けられずにいた。

「そうか、幼馴染のかわいこちゃんに泣かれて悲しいんだな」
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「かわいこちゃん…」「そのワードのチョイスなんですか店長…」

というリペアラック従業員たちの突っ込みに「すまん、他に思いつかんかった…」と言いながら
思わずはにかんでしまったラクリムの顔を見て、ツバサは思わず吹き出しそうに笑いをこらえている。

「そう、その顔だよ、お前の顔は」ラクリムが親指を立ててウインクした。

結局ツバサから詳しい経緯は聞き出せずそのままレースに送り出したが、概ね思い当たる節はあった。
あのような黒い翼が何の「契約」も無しに突然生えてくるわけがない。
ラクリムはうんうん唸りながら考えていた。

「専門外だがあの様子だと契約は完全には成立してないって事か?
 これを無効化するにゃあどうしたら良いか…魔女か、腕利きの術師か…それともあいつ自身か」

レースに向かうツバサは体がどんどん重くなっているのを感じていた。

#pixivファンタジアSOZ#ミリオン商会#ラクリムの腕#豊穣の祭典#バラリア・レース#フリークスダービー【蹄王賞】#【ゼ農】

2022-12-07 11:39:27 +0000