「カペラ公はこれからどちらに?」
「なに、最近どうにも忙しかったからねぇ。毛並みが悪くなる前に整える道具でも新調しに行こうと思ってね」
「悪くなるつって、全然毛艶変わらなくないですか・・・?」
「全然違うとも、ほら」
そういって杖を持っていた手をバットとリレイアへと伸ばして見せるカペリウス。
それを二人は覗き込むようにして体を前へと伸ばしていると。
パッと開かれた猫の掌から現れたのはカペリウスの手には小さく、人間の手にはちょうど良い大きさのブローチのようなもの。表面には魔物発見報告書でよく見るシャトリエルの印章が印字されている。
「なん、だこれ?」
「これって・・・懐中時計、ですか?」
「少し惜しかったね。これは羅針盤だよ」
「「羅針盤?」」
「少し特殊な羅針盤でね。赤い針は敵意の位置を、紫の針は正しい方位を、緑の針は現在地から一番近いシャトリエル駐屯所を差すように作られている」
ちょっとした錬金術の応用のようなものさと笑うカペリウスを横目に、二人は羅針盤を興味深く覗き込む。
外装はシンプルな作りをしているが、パチリと留め具を外して開いてみれば内側には大きな紫色の魔法石。
細かな装飾を施された盤面には確かに三色の針が揃っている。
明らかに高価そうな物にバッと顔を上げれば、そこには変わらない笑みを湛えたカペリウスの姿があった。
「リレイアちゃんのシャトリエル入隊祝いのようなものだ。それに、地下水路やアトラの時もよく頑張ってくれたからねぇ」
「で、でもこれは・・・」
「君の頑張りは認められて然るべきもの、ちょっと早目のボーナスだと思えばいいさ」
「あ、ありがとうございます・・・!」
「それと、ほら。バットくんも持っていくといい」
「え、お、俺もですか!?」
「シャトリエルの門戸はいつ、誰であろうとも開かれている。
君がその門をくぐってくれると僕としても喜ばしい限りなのだがね」
ジリリリと大きなベルの音がホームに響き渡る。
「おや、そろそろ出発の時間だねぇ」
腰掛けていた旅行鞄から腰を持ち上げ、かけていた杖を軽く一振り。
すると、重厚そうな鞄がひとりでにふわりと持ち上がる。
「それではリレイアちゃんにバット君、よい聖夏祭を」
優雅に長い尾を一振りしてカペリウスはノルスドル鉱竜鉄道へと乗り込んだ。
<一方その頃の車内>
「わぁっ、大きなネコさんですね~」
「あれワシの知り合いじゃぞ」
指差しビシッ!
「えっ」
「随分と大きゅうなったのぉ~」
「(ど、どういったご関係なのでしょう・・・)」
《 登場人物 (敬称略) 》
◆ザリア軍情報統括局 魔物討伐管理部シャトリエル カペリウス・ヘディラアイビー准将
【illust/102309015】
◆断ち撫でのリレイア 【illust/102138659】
◆バット・ホームラン 【illust/101973350】
◆アリス・ハート 【illust/102329576】
◆もうけまっか商店の金 【illust/102309683】
◆ノルスドル鉱竜鉄道 【illust/102212312】
◆鉱山竜のグラネ 【illust/102309394】
◆棘の十字目 ウェルウィッチア 【illust/102751733】
<小噺>
やっと完成した・・・!
カペラ公はこれから王都→トライドール→王都の順番で移動して戻ってくる予定です。
ちょっくらトライドールの蔦の入る某御店に毛並みを整える道具を依頼しに行ってくるぜ・・・!
3章中に終わるのだろうか。いや、終わらせるんだよ・・・ッ!
<SpecialThanks>
◆企画元:pixivファンタジアSOZ【illust/101965643】
◆素敵なロゴを有難うございます!【illust/101966120】
2022-12-02 20:46:36 +0000