【PFSOZ】カイロクイチゴ【植物】

照留セレン

カイロクイチゴ

大陸中部~東部原産。古代に行われた栽培化とともに各地に広がった。
葉は互生。普通3裂し、葉裏に白い毛が密生する。
開花期は春から夏。白または淡紅色の花を1節に1~3輪つけ、秋には黄~赤色の実を下向きにつける。
現在は人の手が入った丘陵地や草原、耕作放棄地などで見られる。
原産地では明るい林縁や野に自生する。軟らかく肥沃な土と日当たりを好み、地中深くに地下茎を伸ばす。
葉の表面を覆う蝋成分は水分の蒸発を防いでいる。乾燥した枝や葉は燃えやすく、焚きつけに用いられる。
枯れ落ちた葉が堆積し、太陽光や発酵熱などによって温められると、自然発火することがある。
土中に埋まった地下茎が生き残り、灰を養分として急速に成長することで、焼け跡ではカイロクイチゴが優勢となる。
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あるところにお父さんとお母さんと、3人の息子が住んでいました。ある日の朝、お母さんは、いちばん上の息子にお使いを頼みました。
「森へ行って、水を汲んできておくれ。汲んだらまっすぐ帰っておいで。池のほとりのカイロクイチゴは、決して取ってはいけないよ」
1番目の息子が森を進んでいくと、きれいな池が見えました。おひさまの光が差し込んで、小鳥たちが楽しそうに歌っています。
見ると池のほとりに、カイロクイチゴのみごとな木が生えていました。赤と黄色にきらきら輝く実が、枝を曲げるほど鈴なりで、ひとつひとつがまるで夕焼けのようでした。1番目の息子は、喉が乾いてきたことに気づきました。なんだかお腹もすいています。
「ここでひと休みしよう」
1番目の息子はそう思いました。お母さんの言いつけをすっかり忘れてしまったのです。1番目の息子はカイロクイチゴの実を手のひらいっぱいに摘んで食べ、それから池の水を飲みました。
昼間になっても1番目の息子が帰ってこないので、お母さんは2番目の息子を呼んで言いました。
「森へ行って、水を汲んできておくれ。汲んだらまっすぐ帰っておいで。池のほとりのカイロクイチゴは、決して取ってはいけないよ」
2番目の息子が森を進んでいくと、きれいな池が見えました。おひさまの光が差し込んで、小鳥たちが何やら歌っています。
「かわいい坊ちゃん連れてきた。木の妖精が連れてきた」
2番目の息子はあたりを見回しました。みごとなカイロクイチゴの木が、枝いっぱいに実をつけています。けれども妖精なんて、どこにも見えません。2番目の息子は池の水を飲んで、それからカイロクイチゴを手のひらいっぱい食べました。
おやつの時間になっても2番目の息子が帰ってこないので、お母さんは不思議に思いました。けれども3番目の息子を呼んで言いました。
「森へ行って、水を汲んできておくれ。汲んだらまっすぐ帰っておいで。池のほとりのカイロクイチゴは、決して取ってはいけないよ」
3番目の息子はまだ小さかったので、お母さんはパンとチーズを持たせることにしました。
3番目の息子が森を進んでいくと、きれいな池が見えました。3番目の息子はお母さんの言いつけ通り、水を桶に汲み始めました。池にはおひさまの光が差し込んで、小鳥たちがひそひそ歌っています。
「坊ちゃんふたりも連れてきた。木の妖精が連れてきた」
3番目の息子があたりを見回すと、赤い髪をしたやせっぽちの女の子がこちらを見ていました。お腹がすいているのかしら? 3番目の息子はそう思って、その子にパンとチーズをやりました。それから、女の子に尋ねました。
「ぼくのにいさん、知らないかい?」
「知らないわ」
女の子は言いました。
「あんたもイチゴを食べに来たの? この木はじきに死んじまうわよ。あたしこれから引っ越すの」
池のほとりにはカイロクイチゴのみごとな木が、赤い実を鈴なりにつけています。その陰で、なにやらごそごそ音が鳴り出しました。
「にいさん! にいさん!」
3番目の息子はなんだかこわくなって、大きな声で呼びました。するとカイロクイチゴの葉陰から、2羽の鳩が飛び出しました。
「これがあんたのにいさんたち?」
女の子が口笛を吹くと、鳩たちはたちどころに、1番目の息子と2番目の息子の姿にかわりました。そのとたん、カイロクイチゴのみごとな木が、ぽっきり折れてしまったのです。さっきまで歌っていた小鳥たちは、一斉に飛び去ってしまいました。女の子はいつの間にかいなくなっていました。そのかわりに、ぱちぱちと焚火の音がするのです。
3人の息子たちは、水を汲みに来たのも忘れて、大急ぎで家に帰りました。
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古い版では兄の行方がわからないままになっているものや、兄たちが池の中の別世界に行ってしまって出てこないものがある。
本種は子供の目を引きやすいが、崩れやすい土地に生えていることがあるほか、結実期は冬ごもり前の肉食獣が活動する時期にあたる。
一般的には、赤い実に惹かれた子供たちが危険な場所に近づかないよう、戒める話として受け止められている。
採録地の森は既に失われているが、子供が出かける時には必ずパンとチーズを持たせる習慣が今でも残っている。

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2022-11-27 14:49:07 +0000