【PFSOZ】水底に美酒を求めて

堕魅闇666世

沈没船illust/102830727
の中に眠るという幻の美酒
カデ・ヴェルバ・シャルドネ
(修道院ワインillust/102274631
の設定をお借りしました)
求めて探検に挑む
ヨナタンillust/101998566

紅玉楼さんillust/102040761

くうきだまの術illust/102900639
をお借りして船内を捜索しますが・・・

遭遇するモンスター
ミドリザメillust/102870359
テンタクルヘッドシャークillust/102935657

介抱していただいた
銀コさんillust/102078009
ごちそうさまでした
きつねうどんillust/102109998
つきしろさんillust/101997310



「沈没船ん〜〜〜??
僕ぁそういう面倒臭そうなのはごめんだよ」
「そこをなんとか・・・!
あの船には、もう地上のどこでも手に入らない
貴重なお酒が眠ってるんです!!」
あからさまに渋る紅玉楼に、ヨナタンが食い下がる。

「ふむ・・・?お酒?」
「そうです!エギリア壊滅で消失したザング・エラ修道院の
名品、カデ・ヴェルバ・シャルドネの大樽が
いくつも積み込まれていたと聞きました!
海の底でじっくり熟成されて、
またとない美酒に仕上がっているはずですよ!」
興味を示したところを捉えて一気に捲し立てる。
セールストークに成長がうかがえるヨナタンであった。

「これはまた、見事に真っ二つだね」
「シャルドネの樽は船底部に積み込まれていたそうです。
他の金銀財宝にも負けない価値があるはずですよ!」
紅玉楼の仙術、くうきだまで作られた泡の膜に包まれて
呼吸を確保したヨナタンが、沈没船、クイーン・ブルーロッド号の
破断面から船内に侵入する。

腐食が進んだ船内は漁礁と化しており、
物陰から姿を見せる魚たちに驚かされながらも探索を進めていく。
「調度品の類もそれなりのお宝に見えるけど、いいのかい?」
「酒樽だけでも大荷物ですからね。
まずはそちらを運ぶのに専念しますよ」

半ば海底の砂に埋もれた船底には、
果たして無数の大樽が保管されていた。
船の大破と共に砕けたものもいくらかあったようだが、
無事な大樽だけでも数十は下らない。
「やった!このラベル・・・間違いありません、
年代物のカデ・ヴェルバ・シャルドネですよ!」

ゼオンの怪力で担ぎ上げ、くうきだまに取り込んで海上へ。
これからピストン輸送で忙しくなる・・・そう思っていた矢先。
「おっと・・・ここは奴らの餌場でもあったようだね」
紅玉楼の視線の先には、エメラルドグリーンの海に適応した、
碧の肌を持つサメの姿。

ふわふわと海中を漂うヨナタンたちは格好の獲物と映ったようだ。
速度を上げて急接近するその鼻先を、恐れることなく
ヨナタンが睨み返す。
「・・・ここは、僕達に任せてください。
いくよ、ゼオン!!」
「オメェ、ハナからこの俺様をアテにしてやがったな?
まぁ・・・こうなっちまっちゃぁ・・・」

ヨナタンの声に応えた御神体の右腕が肥大化し、
隆々たる筋骨が膨れ上がる。
「やっちまうしかねぇがなァ!!」
くうきだまの膜を突き抜けて繰り出された剛腕が
ミドリザメの顔面を直撃。

一撃で潰れたトマトのようにひしゃげた
ミドリザメの遺骸が海中に漂う。
「もったいないのでこいつも後で回収しましょう。
フカヒレをつまみにお酒なんてどうですか?」
「・・・キミ、意外に武闘派だねぇ」
あっけらかんと言ってのけるヨナタンの場慣れした様子に、
紅玉楼も呆れるやら感心するやら。

「呑気なこと言ってる場合じゃねぇぞ。
・・・今度の相手はちょいと手強そうだぜ」
ゼオンが指し示した先に現れる異形のシルエット。
裂けたように開かれた口腔から、先端がサメの形をした
無数の触手を生やした凶々しい化けザメが海底から迫り来る。

先制したのはテンタクルヘッドシャーク。
大量の触手を一斉に解き放ち、紅玉楼とヨナタンを包囲する。
「百烈鉄拳、虎羅掌!!」
解放した両腕による高速ラッシュで接近する触手を迎撃。
仕掛けを凌がれ、怯んだ一瞬を突いて追撃。
「乾坤一擲、妖夷掌!!」
鋭く伸びる右ストレートがテンタクルヘッドシャークの脇腹を直撃。
海底に叩きつけられるが・・・

「呆れた生命力だね・・・まだピンピンしてる!」
むしろ、思いがけぬ抵抗に怒り狂っているようだ。
反撃の触手が先刻に倍する勢いで接近する。
「迎撃しきれねェな・・・隠れろ!」
そんなこと言われても・・・などと口答えしている暇は無い。

目についたのはやはり沈没船。戸板が砕けた
船室に身を潜めるが、迫り来る鮫触手が次々に壁に食らいつき、
ミシミシと木材が砕ける音が室内に響く。
「おい、ヨナタン・・・テメェが始めたことだ。
ケツを持つ覚悟はできてるんだろうな」
いつになく重々しいゼオンの声に、ヨナタンも息を呑みつつも頷く。

「よっしゃ、いっちょ派手にカマすぞ!耳ィ食いしばれェ!!」
御神体の頭部を解放。かつての大魁獣、ガンゼオンの本性を
顕現させた顎が開かれ、天を衝く咆哮が海底に轟く。
「爆震咆哮、怒己威衝ッ!!!」
その叫び、それ自体が破滅的な衝撃波となって水底を揺らし、
迫る触手諸共にテンタクルヘッドシャークを粉砕し、吹き飛ばす。

「こりゃたまげた・・・大魔法クラスの破壊力だね!
大した相棒じゃないか、ヨナタンくん・・・おい!?」
意識を失ったヨナタンを抱え、紅玉楼が急浮上する。

「・・・おや?目が覚めたかい?
よかったよぉ無事でぇ。
ほら、おうどんをお食べ。あったまるよぉ」
意識を取り戻したヨナタンがまず目にしたのは、
自分を覗き込む銀コさんの気遣わしげな顔だった。
身を起こし、温かい丼を受け取る。
一口啜るや、お出汁の旨味が口一杯に広がり、
海底で冷えた体がじんわりと温まる。

「美味しい・・・お気遣い感謝します、銀コさん!
それに、この体の包帯・・・つきしろさんですね。
ありがとうございます、だいぶ楽になりました」
「いえいえ、お安い御用です〜
お酒の回収はこちらに任せて、ゆっくりお休み下さい〜」
体に巻き付けられたつきしろの切れ端が、消耗した体力を補う。
・・・それでも、体の奥にはっきりと感じる強烈な虚脱感。

深く息を吐くヨナタンに、傍に置かれたゼオンが囁く。
「・・・これでわかっただろう、ヨナタン。
俺様は、お前が思うような都合のいい力じゃねぇ。
・・・お前の命を食い荒らす、疫病神なんだよ」

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2022-11-22 05:45:05 +0000