「ヒャッハー!」「ヒャッハー!」「ヒャッハー!」
独特の雄たけびが上がると度に 木槌が振り下ろされ 鈍い衝撃音を立てる。
ここはカラガリア地方 通称・モヒカンズの村。 正式名称は別にあるらしいのだが、最寄りの鉄道の駅名が「モヒカンズ駅」なのでモヒカンズの村として広く知れ渡っている。
この村は異様である。
わずかな移住者を除けば住人は皆、筋骨隆々でモヒカン頭かスキンヘッド。金属製の肩パッドのついた民族衣装を身にまとう。
そして強面だ。 これは老若男女・種族を問わず。 汎人族も獣人族も はがね人だってみんなそうだ。
そんな世紀末蛮族じみた彼らが 車座になって一斉に槌を振り下ろす光景は 完全に誰か哀れな被害者に「袋叩きの暴行を加えている」ようにしか見えない。
そう。 そうしか見えないのだ。
だが違う。
これは彼らの「もてなしの儀式」だ。
「ヒャッハー! ひと臼 搗きあがったぜぇーい!」
モヒカンズの村では来客があった際には、餅搗きをして客人をもてなすのだ。
これは荒野という環境が関係している。 獣の砂漠シャララクほど暑くも乾燥もしてはいないが、赤土の地カラガリアでは水も草も貴重であり、食料の入手は困難である。
そんな地を渡る旅人に、何をふるまえば一番歓迎の気持ちを顕せるだろうか。
普通の農村では 大のご馳走である肉料理はダメだ。 肉はそれなりに腕に覚えがあれば、荒野では入手は難しくない。
パンもあまり好ましくない。 旅の道中で乾パンや薄焼きパンなら食べ飽きているはずだ。 では野菜料理は…
と色々考えた結果が餅だったらしい。
餅は 腹持ちが良いのに消化が良く そして 特別な食事で 荒野ではまず手に入らない。
「どうぞ カレー雑煮 です」
ただし、この村で作られている餅は、どこかから交易で手に入れて来た糯米でできているわけではなく、荒野のこの村で栽培された陸稲を材料にしてできている。
陸稲は収量は落ちるが水田が作れない場所でも栽培できる。
ただし、炊き上げた際に水稲ほどは粘らないので、陸稲で作られた餅は弾力や滑らかさに劣るとされているが…圧倒的に喉に詰まりにくく、食べ過ぎても胃もたれしない長所があるので そこは好き好きというやつだろう。
だが、それはそれとして…
「きなこもち です」
「しょうゆもち です」
「からみもち です」
「なっとーもち です」
人が一度に喰える餅の量には限界がある。
テーブルの上にうず高く積まれた白餅といい、来客という来客が皆、騎竜族か何かだと勘違いしてるんじゃないだろうか?
(モヒカンズの村を訪れた 旅人の手記より)
後日、うず高く積まれた白餅の意味を知った。
確かにあれは「騎竜族のような大食らいの種族」であれば、その場で食べても良いのだが、本来あれは帰りの道中で食べるために持たせる 弁当やお土産のようなものらしい。
餅は米を圧縮してあるので嵩張らず、野営の焚き火で炙るだけですぐ食べられる。携行食の類としては水分が豊富であり、道中の水の消費を減らすことができる。(陸稲だからこそ、水なしに食べても詰まりにくい)
さらには 荒野の環境では 表面にひび割れが走りこそすれどもカビが生えることは無く、1週間はそのままで。 乾ききったら揚げたりスープに入れると美味しく食べられるという…
お借りしました。
ヌタバ組合長 illust/102093707
ユニオン・ゼラルディア鉄道 illust/102119712
ゼラルディア農業組合の本部がどこにあるかは存じませんが、組合長がフィールドワークに出られたのを幸いにillust/102328352、地方の農家に視察として立ち寄ってもらうことにしました。
視察先illust/102300579
村illust/102249650
不都合等あればパラレルスルーでお願いします。
本当はインターバル期間中に投稿したかったけど 無理だったから1日遅れで…
2022-11-16 03:59:07 +0000