ひとつのタマゴから生まれた双子のハーピー。
姉のシナノと弟のカタリ。
姉のシナノは気が強く、弟のカタリは気が弱い。
一見正反対のふたりだが、二羽には二羽にしか分からない共通点があった。
それは、いわゆる『前世』とやらを覚えているという事だ。
シナノのこの世界での最初の記憶は、恐らくタマゴの中だった。
自分だけの空間に、突如現れたのがカタリだ。
突然湧いてきた異物への不快感。それがシナノの最初の自我である。
蹴り殺してしまおうか。囁いた本能に、いやしかし待てを唱えたのもまた自分だった。
どうもこの闖入者、『自分』より『年下』で。しかもシナノの殺気を感じ取り、いっちょ前に怯えて縮こまっているではないか。
やめたやめた、バカバカしい。
自分より弱い物をいたぶるなんて、■■みたいな真似を私は絶対しないのだ。
そうして、フンスと場所を分けてやれば、そいつはほう、と安堵の息を漏らした気配がした。
ひとつのタマゴにふたつの命。本来なら生まれるはずのない双子は、狭いタマゴの中でぎゅうぎゅうと成長していった。
やがて孵化する頃になって気が付いた。
──あれ?これ殻割れなくない?
なんせ本来一羽用の空間しかないタマゴの中に二羽いるのだ。あまりに狭すぎて羽も足も動かせやしない。
殻を本気で蹴ればいけるかもしれないが、まず間違いなくどちらかは怪我をするだろう。
冷や汗をかいた二羽だったが、幸いタマゴの殻が割れないと気付いた仲間のハーピーたちが、カラを割るのを手伝ってくれたため、無事に誕生と相成った。
双子で生まれた唯一の弊害として、仲間たちより随分と体格が小さく育つこととなったが、争い嫌いのカタリはそれにホッとしたようだった。
姉のシナノと弟のカタリ。
他のハーピーたちがタマゴ泥棒事件をきっかけに、ケンリショ目指してニンゲン社会に進出したのと一緒にこの世界のケンブンを広めるためにアラディア院にやってきた。
年齢を聞かれ、顔を見合わせ、(──なんせハーピーたちには人の誕生日のような細かい概念はなかったので)シナノは答えた。「17」と。カタリは答えた。「14…」と。
双子なのに?まあよくある話だ、と尋ねた職員は間をとって『15』とした。
シナノは憤慨していたが、まあ到底17には見えない落ち着きだったので。
ハーピーとして生まれたシナノだが、彼女にはうっすらと『ヘイセイ』と呼ばれた世の中で、17まで人間として生きた記憶があった。
だから『土地のケンリショ』なんて人間社会の知識があったし、他のハーピーたちよりニンゲンたちに対して懐疑的でもあったのだが。
一方のカタリは、14までどこかの世界の貴族サマの長男坊として生きた記憶があるらしい。
死んだの?と問えば、「逃がしてもらったんだ。ぼくの……カミサマに」と返ってきたので、すわヤバイ宗教かとシナノはドン引き顔で深く問うことをやめた。なんだそのうさん臭い話。
カタリの名をつけたのはシナノだ。『語り』と『騙り』を掛けている。アンタに似合いよ、と言われた本人は、察しながらも苦笑して頷いた。
シナノは幸せだ。きっと、前世よりずっとそうだろうという意識がある。
どうしてここで生まれたのかは思い出せない。だけど、自分を受け入れて優しく包んでくれた仲間のハーピーたちを愛しているし、ようやく得られた自分の居場所を決して誰にも奪わせないという強い決意がある。
その為になら、この仲間たちより小さな鉤爪を振るう事にも戸惑いはない。
片割れのカタリは、『童話作家』になりたいのだと零した。
恐る恐る口にしたそれを、仲間たちは喜んで応援してくれた。ドウワサッカ───というものが、どういうものか分からない者が大半ではあったのだが。
それでも応援してくれた、その事実にカタリは泣いた。仲間たちは慌てたが、うれし泣きだといわれてほっとした。
なるんだ、この場所で。──今度こそ。
そんなカタリを見つめながら、ふと呟いたシナノの言葉を聞くまでは。
「ところで、アンタ。私たちの『翼』でどうやってペン持つつもり?」
蒼白になって固まったカタリを見て、やっぱこいつどこか抜けてんな、とシナノは頼りない弟がパニックを起こしたのを、尻を蹴飛ばし落ち着かせるのであった。
◆◆◆
「どうしようシナノどうしよう」
「うっさいわね!こんな世界なら何かあんでしょ!自動筆記魔法ペンみたいなやつ!知らんけど!」
名前:左がハピ・シナノ(姉)。右がハピ・カタリ(弟)。(ハピが苗字扱い)
年齢:現在16(ということに学園ではなっている)
種族:ハーピー族
身長:165cmほど
一人称:シナノ『私』、カタリ『ぼく』
オルギット団に所属しているタマゴ売りのマカロニ【illust/102108160】と同じ森の出身で、マカロニのことは実の姉のように慕っている。
ふたりそろって『前世』の記憶があるが特にそれについて他の人間に口にすることはない。
姉のシナノはハーピーの森や仲間を守るための力や知識を得るために学園にて学ぶ。
弟のカタリは、童話作家になりたいようで、図書館にて本を読んだり、自分のようなペンを持ちづらい種族でも使える使いやすい自動の筆記ペンを探したりしている様子。
シナノは弱いものいじめが大嫌いで、他のハーピーたちと違って自分で産んだタマゴは絶対誰にも食べられたくないし自分でも食べられないため、こっそりモノゴイ【illust/102252012】に渡して処理している。他のタマゴを食べるのは別に平気。自分のはダメ。ダメったらダメ。
カタリは争いや戦いが苦手で、本や童話が大好き。なぜか『ザリア軍』と聞くと少し飛び上がるクセがある。
※先に投稿した自キャラ、マカロニの同郷の双子ハーピーです。こちらはメインで動かすことはあまりありませんが、友人・モブ設定などご自由にお使いください。
キャプションが大体すべて。
更に深く何か知りたいという人はこちら【novel/series/1075664】のポルトランテールシリーズの6辺りを読んでもらうとア~するかも。しないかも。読まなくても全然大丈夫。
お借りしました:ロゴ【illust/101965856】(追記:リンク張るの忘れてたすいません…!)
企画元:【illust/101965643】
2022-11-10 02:47:18 +0000