お世話になっているお得意様
これからお世話になる新しいお客様
午前中の怒涛の打ち合わせラッシュを経て事務所に戻ってきた
昼食を取る時間も惜しく、コーヒーを淹れて自席に戻ると
少しでも休憩しようと机に突っ伏した
ドアが開く、「お疲れ様でーす⭐︎」と疲れ切った俺とは正反対の元気で明るい声が事務所に響く。
うちの事務所…283プロに所属しているアイドル、大崎甘奈だ。
「プロデューサーさん、お疲れさまでーす……」
突っ伏した俺に気を遣ったのか甘奈が小声で俺の背中に向かって挨拶をしたのがわかった
甘奈に気を遣わせるのも悪いと思い、俺は身体を起こして甘奈に返事をする
「甘奈、お疲れ様」
「プロデューサーさんごめんね、起こしちゃった?」
「いや、元々少し休憩するつもりだっただけだから大丈夫だよ」半分嘘だ。
「そっか、ってプロデューサーさんめっちゃ疲れた顔……」
「いつも甘奈たちのためにありがとう。プロデューサーさん」明るい彼女の顔が少し曇る
「俺が好きでやってることだし、甘奈が気にすることないよ」
少しの沈黙。気まずい……
そうしていると甘奈は!となにかひらめいた顔をした
「ほらプロデューサーさん。午後も笑顔で頑張ろ?」
甘奈が自分の手を両頬に持っていき、自分の口角を引き上げ、俺に笑顔を促してくる。
そんな甘奈が健気で可愛らしくて俺はつい笑顔になってしまった。さすがは甘奈だ
「プロデューサーさん笑ったー。やっぱ笑ってる方がいーね⭐︎」
「ああ、甘奈の言う通りだな。仕事の基本は笑顔…だよな!」
「じゃプロデューサーさんが少しでも休めるように甘奈手伝うね⭐︎」
「まずはこのファイル!甘奈がいつもの棚に戻してくる!」
ファイルを持ってパタパタとかけていく彼女を見ながら、少し冷めたコーヒーを啜り
彼女の笑顔を世に広めるために頑張ろうと気持ちを新たにしたのであった
2022-09-07 03:58:43 +0000