酔ってないですよぉ~

+慧+@C105(日)西か-4

「あ~~トレーナーさんじゃないですかぁ~~~」
人の行き来が活発な夜の繁華街を歩いていると、こちらの名前を呼びながら近づいてくる声がする。
振り向きその声の主を確認するとライトハローが手を振りながら満面の笑みで近づいてきていた。
驚きながら待っていると目の前でつまづいた。
危ないと思い身体を支えてあげる。

「大丈夫ですか?てか酒くさ!」
「えへへ~すみませんおっちょこちょいで~」
ふにゃっとした顔で笑う彼女の頬は染まり、アルコール臭を漂わせていた。

「聞いてください!私ぃまたプロジェクト大成功させちゃいました~」
「お、おめでとうございます……」

グランドライブ復活を目指し、様々な人を巻き込み見事大成功させた彼女は今や凄腕プロデューサーとして様々な企画を行っている。
先日も彼女が企画したライブが行われ、同月に開催されたどのライブよりも多い動員数だったと報道されていた。
今日はその打ち上げということで先ほどまでスタッフ達と飲んでいたらしい。

「トレーナーさんはなんでここにいるんですか~?」
「まぁ自分も上手くいったご褒美みたいなもんで、飲みに来てました」

現在担当している子がG1を優勝したので、その子のお祝いをして今は一人で祝杯を挙げていたところだった。

「見ましたよ~あの子のレース。もうほんとぉ良いレースでした~おめでとうございます~!」
「ありがとうございます……」
「よーし今からお祝いしちゃいましょ~!行きますよトレーナーさん~!」

こちらの手を握り引っ張っていく。その足取りは既にもつれている。
「ライトハローさん飲み過ぎです。もう今日は止めた方が……」
「全然酔ってないですって~。わたしぃこう見えて強いんですよぉ?」

ただでさえ垂れ目の彼女の瞳が更にトロンとしている。

「そうには見えませんって……」
「じゃあカラオケ!カラオケならぁ良いですよねぇ?」

そう言ってこちらの手首を掴んだまま歩き出す。
現役ではないが彼女もウマ娘だ。
すごい握力で振り払う事も出来なかったため、諦めて引っ張られていく。

「ビール2つで!」
「ライトハローさんだからダメですって!すみませんウーロン茶2つで」

近くのカラオケ店に入る。
ワンドリンクを注文しないといけないがアルコールを頼もうとしていたので静止した。
個室に案内されたすぐ後にウーロン茶が運ばれてきた。

薄暗い照明の中、ディスプレイが眩しく光っている。

「トレーナーさん何歌いますぅ?」

デンモクを取り操作し始める。

「ライトハローさんが歌いたいもので良いですよ」
「え~じゃあうまぴょい伝説にしちゃいますよ~トレーナーさんも一緒に踊りますよ~」

慣れた手つきで操作し曲をリクエストする。

曲が始まり彼女は踊り始める。
サビ前の「チュウする」の時はわざわざこちらに向いてやっていた。

マイクを持たず全力で踊りながらオケに負けない声量で歌っている。

そうこうしている内にうまぴょい伝説が終わった。
ライトハローは踊り終わった瞬間にソファに倒れこむように座る。

「だ、大丈夫ですか?」
「きっつ……一曲でこんな……息あがるなんて……」

踊ったことで酔いが更に回ってしまったのだろう。ウーロン茶を手渡し飲ませる。

「ありがとうございます。トレーナーさんやさしいですねぇ」

力なく背もたれに身体を預けている彼女は目線だけこちらに向けている。

「そろそろ帰りましょう」

流石に心配になってきたので退室しタクシーでも呼ぼうかと思っていると

「トレーナーさんは私と一緒にいるの嫌ですか?」

そう言いながらこちらの肩に頭を乗せてくる。

踊った後だからか、揮発したシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。

「そういう訳ではないですけど……」
「ならいいじゃないですか」

どうしたものかと考えていると

「トレーナーさん」

彼女はこちらを見上げている。

「私ダメダメです。分かってるんです。今トレーナーさんに迷惑かけてるの。でもこんな姿、あなたにしか見せられません」

彼女の谷間に汗が流れ込んでいくのを見てしまい思わず視線をずらす。

「前お伝えしたテレビ番組見てくれました?」
「えぇ、見ましたけど……」
「あれ、トレーナーさんのこと言ってるんですよ。知ってましたか?」

──あの背中に追いつくため、立ち止まってなんかいられませんから!

自分宛に言っていることは自意識過剰でなくても分かった。

「それに私の実家まで来たじゃないですか」

彼女の故郷に遊びに行った時、突然の雨に遭い、立ち寄らせて頂いたこともあった。

「ライトハローさん……」
「トレーナーさん」

今までにないほど力強くこちらの名前を呼ぶ。

「こう見えて私、ウマ娘なんです。一度もライブでは歌えなかったですけど。でも……」

こちらの手を握る。握る力はそれほどなく、添えるような形で。
彼女の体温を直に感じていると大きく息を吸う音が聞こえた。

「『肩を並べて一緒に走りたい』この気持ちは嘘偽りないんですよ。トレーナーさん」

薄暗いカラオケの個室。
ディスプレイの光に照らされたライトハローの瞳は、淡く輝きこちらをまっすぐ見据えていた。

#horse girl#Uma Musume Pretty Derby#Light Hello (Uma Musume)#Karaoke#Aigaomobaba#お先に失礼っ!#キャプションが重馬場#合法ウマ娘#卑しか女杯#酔っぱライトハロー

2022-08-27 10:00:02 +0000