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枡久野恭(ますくのきょー)～～８月某日コミケ当日午前９時 ビッグサイト前～～
８月某日コミケ初日の午前９時ごろのビックサイト展示場正面前。
俺は白いタキシード姿でお立ち台の上に立っていた。その隣にはJS愛妻の留美がウェディングドレス姿で腕を組みながら立っている。
【留美 ウェディング
早い話が、花婿花嫁の姿で開場を待つコミケ参加者たちの注目を浴びている状態だった。
「なあ、これ。晒し者じゃないのか？」
ジロジロとぶしつけな視線を数万のオタクたちからぶつけられて胸が痛い。だが、留美は平然としていた。
「結婚式なんて新郎新婦を晒し者にする儀式。参列者が多いか少ないかだけの違い」
５歳も年下なのによほど俺よりしっかりしているJS嫁の肝は据わっていた。
俺たちは単に新郎新婦のコスプレをしているわけではない。結婚式、というか、その真似事をしようとしていた。
経緯を簡単に説明すればこうなる。
俺と留美はFree!婚制度を利用して５月には結婚していたが結婚式は挙げていなかった。そこに目を付けたのがコミケ準備委員会だった。
８月を目前にして学園都市のレベル５第３位の電撃姫そっくりな少女が比企谷家を訪ねてきた。
『参加者が開場を待っている間の催しとしておふたりの結婚式を挙げさせてください。とミサカは超大手サークルのカップルを出しに理性の足りない暴徒どもを抑える策を提案します』
【御坂妹
何時間も動かずに列を成している参加者たちの余興として俺と留美の結婚を提案してきたのだった。
俺と留美はオリジナル１８禁ジャンルでは超大手である同人サークル『魔法少女ルミルミ』の主筆と売り子。（実際には留美が主筆で俺がアシスタントで売り子。だが、１８禁本ということで体裁上俺が描いていることになっている）コミケでは有名人ということで白羽の矢が俺たちに立てられたのだ。
見世物パンダにされるのは分かっていたので俺は受けるべきか否か迷った。だが、意外にも留美は乗り気だった。
『ウェディングドレスには憧れがある』
そう語った留美は乙女な表情を浮かべていた。妻がやりたいというのなら反対する理由はなかった。
衣装も段取りも、もちろん費用も準備委員会の方が全て整えてくれるというので受け入れることにした。準備委員会側には既に決定プランがあり、俺たちは夏コミの追加原稿の執筆で忙しかった。
『私のドレスの胸の部分はFカップ分の余裕を持たせて』
『無茶を言わないでください。と、ミサカはAカップでも余りそうな貧相な胸を見ながらフッと鼻で嗤います』
『あなたの胸も私と大して変わらない』
超電磁砲そっくりな少女は俺たちの身体のサイズだけ測って帰って行った。
で、それからメールや電話でやり取りしながら今日に至ったのだった。
「留美が花嫁衣装で綺麗なのは良いんだが」
愛妻へと目を向ける。留美の花嫁姿は可愛いというよりも綺麗という表現の方がピッタリだった。リップなんかもほんのり付けて普段よりも大人びて見えた。
「八幡が今すぐにでも私を準備室に連れ込んで凌辱して白いドレスを白濁液で汚したいのはよく知っている。でも、今は駄目」
「そんなこと、考えてねえよ」
顔は正面を向いたまま横目でＪＳ嫁に非難の視線を送る。
ルミルミは俺の知り合いの女どもの中で最年少にして最も過激な妄想をしてみせる。まあ、過激エロ妄想がすぐに思い浮かぶからこそ同人界のトップに君臨できる漫画が描けるわけなのだが。
「この衣装は記念にくれるって言うから花嫁凌辱プレイは家に帰ってから」
「…………分かった」
今夜は小町に廊下には出て来ないように言っておこうと心に決めながら首を縦に振ってみせた。
そうこうしている内に俺と留美のコミケ参加者レクリエーションを目的とした結婚式が始まりを告げたのだった。
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2022-08-07 15:00:40 +0000